ジェイテクトSTINGS VS 豊田合成トレフェルサ

サーブ、バックアタック、ブロックが機能して第2セットを奪取。浅野が負傷退場も、代わって入った柳澤が奮闘した

 天皇杯・皇后杯 全日本バレーボール選手権大会の準決勝はくしくも昨年と同じカードになった。ファイナルをかけて対戦するのは豊田合成トレフェルサ。昨年は1−3で敗れた相手だ。ジェイテクトSTINGSの歴史に新たな1ページを刻む一戦は、午後1時55分に幕を開けた。

 第1セットの立ち上がりは追いかける展開だった。ジェイテクトSTINGSはサーブレシーブを崩されて、攻撃のバリエーションが生かせない。カジースキの硬軟織り交ぜたスパイクで得点を重ねるが、5−8で1回目のテクニカルタイムアウトを落とした。
 試合が動いたのはここからだ。浅野のサーブでリズムをつかみ、ブレイクポイントを量産。カジースキのスパイク、浅野のサービスエースなどで10−8と逆転に成功する。ブロックとレシーブの関係も機能し、豊田合成のダイナミックな攻撃を封じ込めた。
 白熱した好ゲームになった。ジェイテクトSTINGSは柳澤のスパイク、浅野のバックアタックなどで得点を重ねていく。しかし、サーブレシーブが乱れて14−18となったところで柳澤に代えて松原を投入。守備を固めにいった。カジースキが加わって4人でサーブレシーブに入るなど試行錯誤は見られた。相手の隙を突いて、カジースキを軸に攻めていく。
 金丸のノータッチエースで18−20。さらにカジースキがサーブで攻め、自らのバックアタックで20−21と1点差に詰め寄った。ここで豊田合成は2回目のタイムアウトを要求。カジースキの豪快なサーブが決まり、ついに21−21の同点に追いついた。最後は豊田合成の高いブロックに屈したが、23−25と粘り強さを見せつけた。

 ジェイテクトSTINGSが本領を発揮したのは第2セットに入ってからだ。松原がそのままコートに立った。セッターの久保山は、カジースキ、浅野のサイド陣にトスを集めて攻撃を組み立てる。リベロの興梠を軸にサーブレシーブは落ち着きを取り戻していた。ディグに入った本間も、相手の攻撃に対して抜群の反応を見せた。
 3連続失点で5−10と点差は開いたが、金丸の速攻をきっかけに反撃開始。福山の速攻でサイドアウトを切ると、カジースキのサービスエースでブレイクポイントを奪う。
 勝負どころでカジースキの右腕が爆発した。ブロックも決めて14−15。圧巻は16−18からだ。福山のブロックでサイドアウトを切った。カジースキがサーブで攻めて、返ってきたボールをすかさず久保山がダイレクトでたたき込む。ジェイテクトSTINGSの勢いは止まらない。カジースキのバックアタックも機能。福山のブロックなどで5連続得点を奪い、21−18と混戦から抜け出した。
 あとは落ち着いてサイドアウトを切っていくだけだった。ピンチサーバーで入った辰巳が攻守にアクセントを加えた。カジースキが決めてセットポイント。最後もカジースキのスパイクで、ジェイテクトSTINGSが25−22でこのセットを取り返した。

 第3セットも一進一退。先に均衡を破ったのはジェイテクトSTINGSの方だ。浅野のスパイクなどで序盤に3連続得点。福山の速攻、金丸のブロックなどで7−3とリードを奪った。しかし、その後はサーブレシーブが乱れて3連続失点。2点のリードで1回目のテクニカルタイムアウトを迎えたものの、内容は紙一重だった。
 ジェイテクトSTINGSは中盤以降も浅野、カジースキが得点源として活躍。カジースキのブロックでラリーを制し、13−9とした。しかし、ここから5連続失点。サーブレシーブのミスが大きく響いた。嫌な流れは断ち切ったものの、カジースキのスパイクがアウトになり2点のビハインドで2回目のテクニカルタイムアウトを迎える。
 逆転のチャンスはあった。福山、カジースキの得点で僅差をキープした。しかし、豊田合成のイゴールにサーブで攻められて4連続失点。17−22となり、勝負は決したかに思われた。
 だが、この日のジェイテクトSTINGSに諦めの文字はない。カジースキのスパイクなどで3連続得点を奪い2点差まで詰め寄った。福山の速攻でサイドアウトを切った。この日の福山は、Bクイックで相手のブロックを揺さぶるなど随所に工夫が見られた。松原がサーブで攻めて、23−24と1点差。しかし、反撃及ばず、23−25でこのセットを落とした。

 第4セットも、ジェイテクトSTINGSが前半のイニシアチブを握った。浅野、金丸のスパイクなどで5−3と先行。松原のブロックも決まり、9−7とした。
 アクシデントがあった。浅野がプレー中に負傷し、交代を余儀なくされたのだ。9−9と同点に追いつかれた。
 その後は1点ずつを取り合う展開。ジェイテクトSTINGSはカジースキ、松原のスパイクで粘り強くサイドアウトを切った。浅野に代わって入った柳澤も懸命にプレーした。キレのあるスパイクをたたき込み、渾身のガッツポーズでチームを鼓舞した。16−15で2回目のテクニカルタイムアウトを折り返した。試合を優位に進めていたのは、間違いなくジェイテクトSTINGSの方だった。
 2点を追いかける展開から、柳澤のスパイク、松原のサービスエースなどで3連続得点。20−19とリードする。全員が目の前の一球一球に集中していた。しかし、22−24で相手のマッチポイント。柳澤のスパイクで一度はしのいだが、23−25で失セット。敗れはしたが、最後まで全員がファイティングスピリットを見せた。

 4年ぶりの決勝進出は逃した。しかし、V・プレミアリーグも含め、ここ数試合の中ではベストゲームの一つに数えられる内容だった。
 福山は言う。「もう少しコンビの精度を上げて、真ん中のスパイクの決定率を上げたら、サイド陣も楽になると思います。連続失点が一試合の中に何度も出てしまうので、一つでも減らせるようにしていきたい。そうすれば、もっと勝率が上がると思います」。カジースキも「天皇杯はチームとしていいパフォーマンスが出せた。プレッシャーがかかる試合が続くが、うまくいかなかったところを修正して3レグに臨みたい」と振り返っている。
 V・プレミアリーグの再開まで2週間。3レグの初戦となる堺戦は、ファイナル6進出に向けた重要な一戦である。チームのムードは悪くない。パワーアップした姿で新年を迎えたいところだ。

アーマツ・マサジェディ監督

結果は残念ですが、天皇杯をトータルで見ると、今日はいい試合ができました。選手にとっては、いい経験になったと思います。また、これまで取り組んできたブロックとディグの関係もよかった。最後は、私たちの力不足です。(試合中に負傷した)浅野の状態はまだわかりません。ただ、大会を通して若い選手にも力があることはわかりました。愛知に帰ったら各自のコンディションを考慮してメンバーを組み、ベストな状態で戦えるように3レグに向けてしっかりと準備していきます。

マテイ・カジースキ

現時点では、相手の実力が上でした。それが、正直な気持ちです。ただし、今日はチームが最後まで戦っていたし、全員が一つ一つのボールを諦めずに追っていた。チームのいいところが出せました。今季の中でもベストなパフォーマンスが出せましたが、それでも勝てなかったということは、今よりもっと強いチームにならなければいけないということです。個人的にもオポジットとしてはまだ経験不足なので、これから調子を上げていきたいですね。チーム全体のレベルは確実に上がっていますが、ここから勝ち上がっていくためにはまだ足りない部分があります。3レグに向けて、とにかく最善を尽くします。

久保山尚

天皇杯は年内最後の大会なので、いい形で終わりたいと思っていました。細かいミスがあと1点につながらなかった。それが敗因だと思います。今回の天皇杯は、V・プレミアリーグであまり勝てていない状況で臨んだ大会でした。それでも、相手が大学生とはいえ、先週はいい形で勝つことができた。そこは収穫です。ただし、今日のようにプレミア勢が相手になると、小さなミスを出すと勝てなくなる。3レグのスタートまでは少し時間があるので、課題を修正しつつ、コンディションをしっかりと整えていきたいと思います。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

ポイントはラリーを取り切る決定力。課題を克服して3レグに臨みたい

長い長いラリーだった。第3セット、16−17と1点を追いかける場面。久保山のサーブで始まった。ボールがダイレクトで戻ってきた。カジースキのスパイクは相手のブロックに弾かれた。苦しい体勢から久保山が左右にトスを散らす。カジースキのスパイクが、何度も阻まれた。ジェイテクトSTINGSもブロックとレシーブの関係が機能。相手のスパイクを何度も拾った。しかし、最後はイゴールに決められて16−18。第3セットの勝負を分ける重要なシーンだった。V・プレミアリーグを含め、ラリーを取り切れない試合が続いている。ジェイテクトSTINGSの攻撃に工夫はある。変化もある。ただ、得点につながらない。福山は決定力不足を敗因に挙げた。「ラリーになって、取らないといけないチャンスボールが返ってきているのに、スパイクが決まらないという場面が多かった」。課題ははっきりしている。年明けから再開するV・プレミアリーグのことを考えても、天皇杯のベスト4は価値のあるものだ。今日で2017年のすべての試合が終わった。まずはリフレッシュし、気持ちを切り替えて3レグに臨みたい。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS 豊田合成トレフェルサ
第1セット 23 - 25
第2セット 25 ー 22
第3セット 23 - 25
第4セット 23 ー 25
第5セット
日付 2017年12月23日(土)
試合 平成29年度 天皇杯・皇后杯ファイナルラウンド 準決勝
場所 大田区総合体育館
メンバー カジースキ、金丸、福山、柳澤、久保山、浅野 L興梠、本間
Photo