ジェイテクトSTINGS VS 豊田合成トレフェルサ

気迫と気迫のぶつかり合いとなったゴールデンセット。最後は敗れたが、チームは力を出し切った

 勝負は最後の1点が決まるまでわからない。ファイナル3の第2戦、そしてゴールデンセットは、まさにバレーボールの醍醐味を存分に感じさせる一戦となった。
 前日の第1戦をストレート勝ちしたジェイテクトSTINGSは、同じ布陣で第2戦に臨んだ。試合前の表情は落ち着いていた。気迫もみなぎっていた。勝ってファイナルに進む。チームの意思がコートから伝わってきた。ジェイテクトSTINGSの未来を切り拓く一戦が、福山のサーブで幕を開けた。

 セッター久保山の最初の選択は、金丸の速攻だった。鮮やかに決まった。これでサイドアウトを切ると、再び金丸の速攻を使った。相手のブロックに迷いを与えるうえで、十分な立ち上がりだった。さらに浅野にトスを集めて得点を重ねる。福山もブロック、スパイクで得点を奪った。1点のビハインドで1回目のテクニカルタイムアウトを迎えたが、ジェイテクトSTINGSが互角以上の試合運びを見せていた。
 カジースキがこの日、初得点となるスパイクを決めて9−9の同点に追いついた。ここから流れが変わる。立て続けに連続失点を喫し、10−14とビハインドが広がった。カジースキがサーブで狙われた。しかし、浅野、興梠がカバーに入り、すぐさま守備の乱れを修正。清野、金丸のスパイクなどで粘り強く豊田合成トレフェルサを追いかける。
 お見合いなど嫌な失点があった。その後は3連続失点もあった。最後は浅野のスパイクがブロックされて、18−25でこのセットを失った。

 第2セットも拮抗した。ジェイテクトSTINGSはカジースキ、浅野らサイド陣の活躍で得点を加算。立て続けにミスで失点したが、カジースキのバックアタックが嫌なムードを吹き飛ばした。清野、カジースキのスパイクで9−9の同点。反撃の体勢は整ったかに思われた。
 しかし、相手は徐々にカジースキのスパイクに対応してきた。久保山が意地のブロックを見せるが、追いかける展開が続く。均衡を破ったのは金丸だ。金丸のノータッチエースでブレイクポイントを奪うと、福山を軸にブロックも機能。浅野がスパイクを決めて1点のリードで2回目のテクニカルタイムアウトを折り返し、福山のブロックで17−15。5連続得点で逆にリードを奪った。
 その後も清野のスパイクなどでしぶとく得点を重ねた。一時は逆転を許したが、カジースキのサービスエースで23−22と再びリード。しかし、今日のジェイテクトSTINGSはこのあとが続かない。ここから3連続失点を喫し、23−25で2セットを連取された。

 先に2セットを奪われた。それでも、ジェイテクトSTINGSはまだ優位な立場にあった。たとえフルセットでも、勝てばファイナルの出場権を手にすることができる。序盤は硬さが見られた清野も、ようやく落ち着きを取り戻した。第3セットに入って、立ち上がりに2点を奪取。カジースキも続いて、3−1と先手を取った。さらに金丸のブロックで5−3。流れはジェイテクトSTINGSに傾きはじめていた。
 しかし、豊田合成のブロックが容赦なく立ちはだかってきた。カジースキのバックアタックが止められた。清野のスパイクも狙われた。福山も立て続けにブロックされた。そこからは互いに1点ずつを取り合う展開。ジェイテクトSTINGSはセッターの久保山が巧みにトスを散らして得点を重ねていく。しかし、浅野のスパイクが連続で止められて14−20。反撃及ばず20−25でこのセットを落とし、第2戦はストレート負けを喫した。

 これでファイナル3は1勝1敗になった。勝負の行方は、ゴールデンセット(ファイナル進出チームを決めるための25点1セットマッチ)にゆだねられた。
 15分間のインターバルがあった。緊張感が高まっていく。控えの選手も含め、コートの上で円陣を組んだ。明るい声が響き渡った。モチベーションは最高潮に達した。
 ジェイテクトSTINGSは好スタートを切った。カジースキにトスが集まった。浅野も決めた。カジースキのサービスエースで5−2。豊田合成はここで1回目のタイムアウトを消化した。しかし、ジェイテクトSTINGSの勢いは止まらない。福山のブロックでブレイクに成功した。浅野がスパイクを決めて、8−5で1回目のテクニカルタイムアウトを奪った。
 気迫と気迫のぶつかり合いだ。浅野は全身全霊でチームメイトを鼓舞。それに引っ張られるように、全員が躍動した。清野のスパイクでサイドアウトを切った。しかし、ここから4連続失点。カジースキ、清野のスパイクが止められた。
 反撃のきっかけはやはりカジースキだった。スパイク、ブロック、ブロックで3連続得点を奪った。13−11。あとは点差をキープするだけだった。しかし、中盤にテクニカルタイムアウトを挟んで5連続失点。15−18と追いかける展開になった。ワンポイントブロッカーとして古田が入り、福山が決めてブレイクポイント。18−19と1点差に詰め寄った。カジースキのスパイクでサイドアウトを切った。しかし、21−24で豊田合成のマッチポイント。金丸のブロックで一矢報いた。松原をピンチサーバーで送り込み、最後の勝負に出た。相手の攻撃を切り返した。しかし、浅野のスパイクはブロックされ、ボールがコートに落ちた。その瞬間、ジェイテクトSTINGSのファイナル3敗退が決定した。

 プレミア昇格から4年目となる今季のV・プレミアリーグを3位で終えた。ファイナルに行けなかった悔しさは残る。しかし、昇格1年目から8位、5位、4位、3位と着実に順位を上げてきた。ファイナル6で土壇場から3連勝するなど勝負強さを見せた。チームは間違いなく成長している。
「昨季は、ファイナル3に入るために戦った最後の試合(パナソニック戦)で力を出し切れなかった。そのときに比べれば、選手一人一人が成長した。まだまだやらなければいけないことはある。次に向けてしっかり鍛錬していきたいと思います」
 試合後の会見でこう振り返った増成監督。シーズンを通して活躍した金丸も「リーグを通して着実にステップアップしていると感じた。まずは5月の黒鷲旗、そして来季のV・プレミアリーグで、もう一度この舞台に帰ってきて、必ずリベンジします」と誓った。胸元に輝く銅メダルは誇りにしていい。チーム全員で戦い抜いた勲章だ。さらなる高みに向けて、ジェイテクトSTINGSが新たなスタートを切った。

増成一志監督

ゴールデンセットは体力もいるし気力も必要。選手にとっても、いい経験になりました。レギュラーラウンドが開幕したころに比べると、今日までメンバーはかなり変わりました。これは層の厚いチームになりつつある証拠です。とくにV・プレミアリーグは、長いシーズンを戦う上での体、気力、そして技術がなければ戦うことができません。そういう意味では、日々の練習をしっかりやって、後半にいいパフォーマンスを発揮してくれたことは監督としてうれしく思います。これからのジェイテクトSTINGSを担う明るい素材が、頑張って成長してくれました。ご声援、ありがとうございました。

マテイ・カジースキ

ゴールデンセットを含め、4セットを負けてしまったので残念です。ファイナルに進む大きなチャンスでもあり、それを見逃してしまったことを悔しく思います。しかし、昨季よりもいい結果で終了し、メダルも獲得することができました。そういう意味では、いいシーズンを送ることができたと思います。成長した部分をあげるとすれば、メンバーが変わってもしっかりと結果を出せたこと。とくに浅野選手がケガから復帰してからは、チームのレベルを上げ、ものすごいパフォーマンスを発揮してくれた。控えの選手が途中から入ってもプレーのレベルが安定していたので、そこはチームとして成長したところだと思います。

浅野博亮

個人的にはシーズンの途中から試合に出ていたので、もっとチームを助けてあげられたらよかったと思っています。今日に関しては、ゴールデンセットがあるということで、気を緩めずに最初の試合から勝ちにいこうと思っていました。ゴールデンセットに入ってからは、この1セットにすべての気持ちを込めて試合をしようとみんなで話していました。気合いが入り過ぎた部分もありますが、どうしても負けたくないという気持ちをチームのみんなに伝えたかった。いい経験はできましたが、負けたということはまだ自分たちに弱いところがあるということ。そこを自覚して、5月の黒鷲旗、そして来季に向けて分析したいと思います。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

ゴールデンセットの難しさを痛感。しかし、この経験は明るい未来になる

15分——。このわずかな時間が、勝敗を分けたと言っても過言ではないだろう。第2試合が終わり、ゴールデンセットが行われるまでに15分のインターバルがあった。時間の使い方はそれぞれだった。ベンチに座ってコーチの指示を仰ぐ選手。作戦を話し合う選手。スパイクを打つ選手。前の試合を0−3で落としているジェイテクトSTINGSにとって、気持ちを切り替えるには少し難しい時間だった。それでも、ゴールデンセットの入り方は悪くなかった。実際、カジースキのサービスエースや福山のブロックなどで、立ち上がりに最大4点のリードを奪っている。「まずは相手がどういうローテーションでくるのかと考えました。その上で、福山のサーブからスタートしたのはベストな選択だったと思う。選手たちには、1年間の集大成として、この1セットに全力を出し切ろうと伝えた。どちらが勝ってもおかしくない内容だったし、選手たちはよく戦ってくれた。悔しさは時間が経ってから出てくると思うが、まずは選手たちに感謝したい」。増成監督は試合後、こう言って選手をねぎらった。力は出し切った。敗れはしたが、経験は大きな財産になる。日本で初めてのゴールデンセットは、ジェイテクトSTINGSにとって明るい未来を感じさせる1セットになった。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS 豊田合成トレフェルサ
第1セット 18 - 25
第2セット 23 - 25
第3セット 20 ー 25
第4セット 22 ー 25(ゴールデンセット)
第5セット
日付 2017年3月12日(日)
試合 V・プレミアリーグ ファイナル3 第2戦 ゴールデンセット
場所 島津アリーナ京都(京都府立体育館)
メンバー カジースキ、金丸、清野、久保山、浅野、福山 L興梠
Photo