ジェイテクトSTINGS VS 堺ブレイザーズ

緊張の立ち上がりから一転、第2セットから本領を発揮。リベロ興梠を軸に、粘りの守備から得点を重ねる

 ついに舞台は整った。
 今日の第2試合で、3位のサントリーが5位のパナソニックに1−3で敗戦。勝点10のままファイナル6を終えた。この結果によって、勝点8で4位のジェイテクトSTINGSにも、ファイナル3進出のチャンスが回ってきた。
 勝ち上がるための条件は一つ。それは、第3試合で堺ブレイザーズに3−0もしくは3−1で勝つことだ。そうすれば勝点3を上積みして勝点11に到達。勝点でサントリーを上回ることができる。
 誰もがそのことを知っていた。大田区総合体育館は押しつぶされそうな緊張感に包まれていた。コートに入ってきた選手たちの表情も固かった。いつもと違うムードが漂っていた。独特の空気のなか、16時10分、運命のホイッスルが鳴った。

 不安は的中した。第1セット、ジェイテクトSTINGSの脚は動いていなかった。立ち上がりに2点を奪われた。カジースキのスパイク、清野のブロックですぐに取り返したものの、流れをつかみ切れない。3点のビハインドで1回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 その後も、試合のペースをつかんでいたのは、堺のほうだった。ジェイテクトSTINGSは連続得点が奪えないまま、ずるずると試合を進めていく。3連続失点で2回目のテクニカルタイムアウトを11−16で迎えた。最後まで本来の力を発揮できず、18−25でこのセットを失った。

 早くも土俵際に追い込まれた。しかし、選手たちの目から輝きは消えていなかった。金丸は言う。「もう一度、コートを走り回って、声を出して楽しくやろうと話し合った。それで流れがきたと思います」。第2セットに入り、ジェイテクトSTINGSは見違えるような動きを取り戻した。
 序盤は追いかける展開だったが、福山の速攻が反撃のきっかけになった。久保山がサービスエースを奪う。さらに相手のサーブレシーブを崩して追加点の奪取に成功した。清野が決めて、それに続いた。4連続得点。8−7で1回目のテクニカルタイムアウトを制した。
 その後もジェイテクトSTINGSが抜群の安定感で確実にサイドアウトを切っていった。リベロの興梠も、守備で何度もチームを救った。久保山のトスワークも冴えていた。14−12で久保山にサーブが回ってくると、相手のサーブレシーブを崩して4連続得点。清野、福山がスパイクをたたき込み、浅野もブロックで得点を重ねた。勝負どころでは、カジースキが強烈なスパイクをたたき込んだ。主導権を握り続けたジェイテクトSTINGSが、最後は金丸の速攻で25−19とし、セットカウントを1−1のタイに戻した。

 第3セットも、ジェイテクトSTINGSの気迫が上回っていた。序盤こそ相手に先行を許したが、清野のスパイク、浅野のブロックですぐに逆転。福山もブロック、スパイクの両面で活躍し、チームに勢いをもたらす。浅野のバックアタックも炸裂。さらに金丸が2本連続でブロックを決め、一気に主導権を握った。
 中盤に入っても、ジェイテクトSTINGSの集中は途切れない。久保山も頭をフル回転させながらアタッカーを選択した。高さのある浅野のスパイク、カジースキのバックアタック、福山の速攻、清野のライト攻撃と、それぞれの能力を引き出していく。幅のある攻撃でブレイクポイントを重ね、17−13とリードを広げた。
 カジースキも大車輪の活躍だった。福山のブロック、清野のスパイクも含め、17−15から5連続得点。これで勝負は決まった。カジースキのスパイクでセットポイントを奪うと、最後は金丸の速攻でフィニッシュ。ジェイテクトSTINGSが25−18で2セットを連取した。

 あと、1セット。待ち焦がれた瞬間が訪れた。第4セットの立ち上がりは一進一退。勝利を意識したジェイテクトSTINGSにやや固さが見られた。7−8でテクニカルタイムアウト。その後もシーソーゲームが続く。
 均衡を破ったのはカジースキのサーブだ。ネット際に上がったボールを、浅野がダイレクトでたたき込んだ。11−10と逆転に成功。さらに浅野、清野が得点を重ねていく。今度は浅野のサーブで相手を崩し、福山がダイレクトスパイクを決めた。15−13とリードを2点に広げた。
 ヒリヒリした展開が続く。大事な場面で金丸がブロックを決めた。これで相手がタイムアウトを要求。流れを一気に引き寄せた。一時は清野のスパイクが止められて1点差に迫られるが、ジェイテクトSTINGSに焦りはない。タイムアウトで落ち着きを取り戻すと、相手のミスで2点を続けて奪う。
 カジースキが決めて、ついにマッチポイント。体育館のボルテージは最高潮に達した。勝利はやはりこの男、カジースキの手によってもたらされた。高い打点から打ち下ろしたスパイクが相手のコートに突き刺さる。その瞬間、ジェイテクトSTINGSのファイナル3進出が決まった。

 控えの選手もコートになだれ込んできて、全員が一つになった。コートの上に歓喜の輪が出来上がった。うれし涙を流している選手もいた。一人一人が笑顔で健闘をたたえ合った。
 けっして簡単な道のりではなかった。3レグからファイナル6に入るまで、トンネルから抜け出せず誰もが苦しい思いを抱いていた。
「ファイナル3で戦う豊田合成さんは昨年のチャンピオンだが、私たちは挑戦者の気持ちで戦おうとは思っていません。自分たちがチャンピオンを上回るんだという気持ちで臨みたいし、そうしないと試合巧者の豊田合成さんには勝てない。しっかりとジェイテクトSTINGSのバレーが展開できるように、いい形で来週の2試合に臨みたいと思います」
 増成監督の目線はすでにファイナル3を見据えていた。そして、その先のステージへ――。ジェイテクトSTINGSの歴史に新たなページを刻む戦いは、まだ終わったわけではない。

増成一志監督

今はほっとしたというのが正直なところです。私たちがファイナル3に進む可能性は非常に低かったが、そのなかでも選手たちはよく頑張ってくれた。レギュラーラウンドはベテランがチームを支えてくれたし、ファイナル6では若い選手が「自分たちも試合に出たい」と気迫を持って練習した結果、東レ戦以降の3試合で力を出してくれたと思います。第1セットは自分たちのバレーをさせてもらえなかったが、第2セットからは選手同士が声をかけ合って、力を出し切ってくれた。この一年間、彼らがしっかり練習してきた成果だと思います。この力を京都で行われるファイナル3で、昨シーズンのチャンピオンである豊田合成さんにぶつけたいと思います。

金丸晃大

試合がはじまる前に、3−0もしくは3−1で勝てばファイナル3が決まるということがわかりました。選手みんなが緊張して、それが第1セットに出たと思います。でも、第2セットから切り替えて、みんなで楽しくバレーをすることができました。ブロックに関しては、これまで相手のスパイクに対して手を動かしてしまうことがありました。そうすると、相手はその隙間や横を狙ってくる。そこを改善し、なるべく自分の正面に手を出すことを意識したら、いいところでブロックが止まるようになりました。ファイナル3に出られることを、本当にうれしく思います。

清野真一

試合前はすごく緊張して、第1セットは自分たちのバレーができませんでした。でも、昨日のパナソニック戦も、第1セットを取られてから、3セットを取り返した。今日もみんなで切り替えて第2セットから臨めたので、それがいい結果につながったと思います。僕は速いトスを打ち切るのが役割。サーブレシーブをしっかり返してくれると、その分、僕につくブロックが薄くなります。浅野や興梠さん、マテイにはとても助けられました。個人的にはいつでもコートに立てるように準備しています。それが、こうしてファイナル6でチャンスをもらい、そこで自分の役割を果たすことができた。それは正直、うれしいです。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

昨年のリベンジを果たす。悔しさを経験して、本物の強さを手に入れた

一年前の記憶がよみがえる。パナソニックと対戦した、ファイナル6の最終戦だ。第1セットの立ち上がりに連続失点を喫し、そこからなにもできないままストレート負けした。悔しい敗戦だった。増成監督が振り返る。「あのときは、力のなさを痛感した。まだまだファイナル3に出られる力はないと感じた。しかし、この一年間、その悔しい思いを持って、選手たちは厳しい練習に取り組んでくれた」。悔しい思いが力になり、今日の歓喜につながった。今シーズンのレギュラーラウンドでも悔し涙を流した選手がいる。清野だ。1月22日のFC東京戦。途中出場で活躍したが、最終的にフルセットで敗れた。あの経験と、今回のファイナル6での活躍を切り離すことはできない。「あのときは自分でもよくわからないプレーでした。だけど、そこは切り替えて、練習から自分のプレーを取り戻して、思い切りやっていこうと思った。その結果が今につながったと思います」。悔しさをバネにして這い上がってきた。今回の歓喜もまた、すべての選手にとって礎になるだろう。それこそが、今後につながる本物の強さだ。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS 堺ブレイザーズ
第1セット 18 - 25
第2セット 25 ー 19
第3セット 25 - 18
第4セット 25 ー 21
第5セット
日付 2017年3月5日(日)
試合 V・プレミアリーグ ファイナル6 第5戦
場所 大田区総合体育館
メンバー カジースキ、金丸、清野、久保山、浅野、福山 L興梠
Photo