ジェイテクトSTINGS VS JTサンダーズ

サーブレシーブを崩されてリズムを失う。ハードスケジュールの中、最後まで全力を出し切った

 決着がつくと、高橋(和)は両手で顔を覆った。こみ上げてくるものを、たくし上げたユニフォームで拭っていた。その瞬間、何が脳裏をよぎったのだろうか。
「悔しさが一番だと思います。引退する選手もいました。今年の黒鷲旗は優勝するチャンスで、それを取り切れなくて、4人には申し訳ないなという気持ちが大きかった」
 初めて挑んだ黒鷲旗のファイナル。ジェイテクトSTINGSは最後まで全力で戦ったが、JTサンダーズにストレートで敗れた。しかし、準優勝という輝かしい成績を残した。閉会式ではすべての選手が、胸に輝く銀メダルを誇らしげに掲げた。

 試合の入り方は最高だった。ライトから高橋(和)が決めて先制した。古田も続いてブレイクポイント。さらにカジースキのスパイク、廣瀬のブロックなどで3連続得点を奪った。ジェイテクトSTINGSには勢いがあった。コートを縦横無尽に走り回り、ムードを盛り上げていた。JTのヴィソットにサービスエースを奪われるものの、すぐにカジースキがサービスエースを取り返し、8−4とリードを広げた。
 しかし、タイムアウト明けにサービスエースを決められると、次第に流れが相手の方へと傾いていく。金丸の速攻は切り返され、高橋(和)のスパイクも止められた。4連続失点で10−11。高橋(和)のスパイクでサイドアウトを切るが、11−13となったところで増成監督は1回目のタイムアウトを要求した。
 カジースキ、古田のスパイクですぐに同点に追いついた。久保山も好レシーブでチームの守備を支えた。リベロの本間も、身を挺してボールに食らいついた。しかし、流れを引き寄せることができない。粘り強くサイドアウトを切って、僅差をキープした。廣瀬が速攻を決め、高橋(和)もキレのあるスパイクをたたき込んだ。金丸のブロックポイントで得点を重ねた。しかし、終盤に3連続失点。タイムアウトでも流れを変えることができず、19−25で第1セットを落とした。

 続く第2セットも、序盤はジェイテクトSTINGSが走った。カジースキが高い打点からスパイクを決め、高橋(和)もバックアタックをたたき込んだ。廣瀬、高橋(和)のブロックも機能して3連続得点。3点のリードで1回目のテクニカルタイムアウトを奪う。中盤はセンター線の速攻を要所で織り交ぜながら、セッターの久保山が巧みに攻撃を組み立てた。
 しかし、サーブレシーブを崩されて17−18と逆転を許すと、ここで1回目のタイムアウトを要求。カジースキ、古田のサイド陣にトスを集めてサイドアウトを切り、一進一退の展開に持ち込んだ。カジースキのスパイクで22−22の同点。さらに、高橋(和)がサーブで攻め、カジースキがネット際に上がったボールをダイレクトでねじ込んだ。23−22とリードした。しかし、ここでタイムアウトを取ったJTが息を吹き返す。カジースキのスパイクが切り返されて、23−24と逆にセットポイントを奪われた。すかさずタイムアウトを取ったが、流れは変わらない。最後はカジースキのスパイクが止められて、23−25でこのセットを失った。

 あとがなくなった。しかし、ジェイテクトSTINGSはけっしてあきらめない。第3セットの立ち上がりは、廣瀬の速攻で得点を奪った。カジースキは相手コートをよく見て、フェイントをぽとりと落とす。古田も決めて3−2。シーソーゲームだが、流れはつかみかけていた。
 しかし、4連続失点で7−10。ここで増成監督は1回目のタイムアウトを要求した。金丸の速攻などで1点差に迫った。高橋(和)もバックアタックを決めた。ブロックも機能し、14−13と逆転に成功。しかし、JTの越川にサーブで攻められると、一気に流れを失った。2本連続でサービスエースを決められるなど5連続失点。高橋(和)、カジースキが決めてサイドアウトを切るが、古田が立て続けに止められて万事休す。若山、角田を投入しても流れは変わらず、最後はサービスエースを決められて18−25で敗れた。

 初のタイトルまであと一歩に迫った。惜しくも準優勝で終わったが、選手は一試合ごとに進化を遂げていた。黒鷲旗の準優勝は、チームにとっての大きな誇りだ。
「選手たちはこの6日間、ハードスケジュールの中でよく戦ってくれました。決勝まで来られたのは、選手たちのおかげ。本当に感謝しています。今日はベストのプレーを出し切ろうと話したし、選手たちもその思いでやってくれました」
 試合後にこう振り返った増成監督。これで2015/16シーズンは終了した。しかし、新たなシーズンはすぐにやって来る。今日この日が、新生ジェイテクトSTINGSの新たなスタートだ。

増成一志監督

第1、2セットは自分たちがリードしていて、いいリズムで試合を運んでいた。しかし、目に見えないところで、少し固くなっていたのかもしれない。今日のポイントは、第2セットの終盤で得点を取り切れなかったこと。そこがもっとも、今日の負けにつながっている。まずは敗戦をしっかりと受け止めて、次に向けて新しいジェイテクトSTINGSを作っていきたい。選手たちは本当によくやってくれました。決勝戦の雰囲気や厳しさも肌で感じてくれたと思う。これからもしっかり鍛錬し、スケールの大きな選手、またはチームを作っていきたい。来シーズンのV・プレミアリーグに向けて頑張ります。

高橋和人

気負いはなかったが、序盤でリードしてほっとした部分があり、流れを相手に持っていかれてしまいました。(相手のスパイクは)ミーティング通りのコースに来ていたが、それを上げ切れないところが力の差。逆に相手は、サーブで攻めてブロックでワンタッチを取るという自分たちがやりたいバレーをしていた。常にベストのパフォーマンスが出せるようにすることが今後の課題。JTさんは何度もファイナルに来ているので、そこの経験値の差がもろに出たと思います。そういう意味では、今回、ファイナルまで来たことはチームにとって収穫だったと思います。

久保山尚

出だしはよかったけど、リードを保てなかったことが敗因です。データ通りのことができず、相手のペースに飲まれて負けてしまいました。全日本組の2人が抜けていたが、そこをどれだけカバーできるかが今回の黒鷲旗のテーマ。そこはみんなでカバーし合えたし、入った選手の底上げができました。今回は準優勝という結果を残せたけど、次のV・プレミアリーグには関係がありません。大きいセッターも新しく入ってきたので、来シーズンに向けてレギュラー争いになると思う。また一からやり直します。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

若手の成長を実感。おぼろげながらも、来シーズンのチーム作りが見えた

来シーズンにつながる大会だった。高橋(慎)、浅野を欠く布陣だったが、代わって入った選手が大きな仕事を成し遂げた。ルーキーの渡邊は、持ち前の高さを生かして、思い切りのいいトス回しを見せた。柳澤は攻守にわたって器用さを発揮した。廣瀬の高いブロックは、プレミア勢が相手でもけっして見劣りはしなかった。何より、この大会は久保山の貢献度が大きい。グループ戦こそトスに偏りが見られたが、東レとの準々決勝以降は抜群のトスワークを見せている。「準々決勝と準決勝は、自分らしいトスが上げられた。とくに準決勝は速攻もうまく使えて、サイドのブロックを1枚から1枚半にすることができた。ブロックされたのも1本だけだった」。また、ベテランも負けてはいない。高橋(和)は決勝戦のあとの記者会見で、「ここで終わっていいのか」と言った。「準優勝で満足している選手はいない。バレーをやっている人間なら、誰もがてっぺんを目指したいと思っている。家族にも『2位は、負けの代表だ』と言われた。その通りだと思うので、今度はてっぺんを狙いたい」。今シーズン最後の大会は、準優勝で終わった。しかし、ジェイテクトSTINGSの未来が見えた。想像するだけでワクワクするような、そんな未来が間もなくやって来る。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS JTサンダーズ
第1セット 19 ー 25
第2セット 23 ー 25
第3セット 18 ー 25
第4セット
第5セット
日付 2016年5月5日(木)
試合 第65回黒鷲旗全日本男女選抜大会 決勝
場所 大阪市中央体育館
メンバー カジースキ、金丸、古田、高橋(和)、久保山、廣瀬 L本間
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