ジェイテクトSTINGS VS 東レアローズ

試合を支配しながら第1セットを失セット。しかし、久保山、廣瀬の活躍などで巻き返し、逆転勝利をものにする

 しびれるような試合だった。何度も行く手を遮られながら、その度に壁を乗り越えてきた。1セットダウンからの大逆転勝利。3−1で東レアローズを下し、チーム初の4強入りを果たした。
 立ち上がりはジェイテクトSTINGSのペースだった。好調の古田が、この日もチームを引っ張った。ライトからフェイントを決めると、サーブで攻めて久保山の得点をお膳立て。サービスエースも決め、チームの4連続得点を演出した。
 しかし、アンラッキーな展開が続き、一時は10−11とリードを許した。ここでも踏ん張ったのは古田だ。高さのあるスパイクでサイドアウトを切ると、このセットで2本目となるサービスエースを決める。さらに、カジースキ、高橋(和)も得点を奪い、1点のリードで2回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 何度も相手に流れが行きそうになった。しかし、ジェイテクトSTINGSは崩れない。金丸がブロック、速攻で得点を重ねた。さらにサービスエースでブレイクポイントを奪う。21−22の場面で増成監督は2回目のタイムアウトを要求。一時は23−23に追いついた。粘り強く戦ったが、スコアボードの数字を覆すことはできなかった。23−25でこのセットを落とした。

 しかし、下を向く選手はいない。第1セットを落としたとはいえ、内容はけっして悪くなかった。「リーグでこういう展開になると、次のセットを自滅で落とすパターンがあった。そういうのをなくそうと、みんなで声をかけ合った」と本間。その言葉通り、第2セットからはジェイテクトSTINGSが本来の力を取り戻した。
 序盤は一進一退。ジェイテクトSTINGSはカジースキが拾ったボールを古田がつなぎ、それを高橋(和)が決めて7−5とリードを広げる。金丸のブロックが決まって10−6となったところで相手はタイムアウトを要求。その後も古田、高橋(和)の得点などで16−13と試合の主導権を握った。
 ここで4連続失点を喫したが、直後にカジースキのスパイク、高橋(和)のサービスエースなどで3連続得点。再び19−17とリードを奪った。ここからは1点ずつを奪い合う展開。セッターの久保山が巧みにトスを散らし、廣瀬の速攻などで確実に得点を奪う。カジースキのサービスエースで奪ったリードを守り切り、ジェイテクトSTINGSが25−22でセットカウントをタイに戻した。

 第3セットもなかなか点差が離れない。ジェイテクトSTINGSはカジースキ、高橋(和)のスパイクなどで東レを追随。ブロックも機能し、粘り強くつないだボールをカジースキが決めて、13−12と逆転に成功した。
 追いつ追われつの展開はその後も続いた。2連続失点を許すと、その直後に古田のスパイク、廣瀬のダイレクトスパイクで2連続得点を奪い返す。さらに2連続得点をお互いに繰り返してスコアは17−16。手に汗握る展開のまま第2セットも終盤へ。廣瀬の速攻で21−20とすると、久保山がブロックを決めて22−20。さらに久保山がブロックでワンタッチを取ったボールをカジースキが決めて23点目。ブロックで相手の攻撃を封じて4連続得点でセットポイント。最後は相手のミスで、第3セットを25−21で奪った。

 ジェイテクトSTINGSが先に王手をかけた。あと1セット。ここでチームを引き締めたのが、ベテランの高橋(和)だ。冷静に得点を重ね、落ち着いた試合運びを展開。けっして勝ち急ぐことはなかった。古田のスパイクで8−7とすると、カジースキの連続得点で10−8とリードを広げる。同点に追いつかれても、本間がつないだボールを高橋(和)が決めて再び12−10とした。
 廣瀬とカジースキも前衛で圧巻の高さを発揮。立て続けにブロックポイントを決めて3連続得点を奪う。本間を軸に、鉄壁の守備も披露した。カジースキのバックアタックでブレイクポイントを奪い21−16。嫌な流れもタイムアウトで素早く断ち切った。最後は高橋(和)が決めて25−21。ジェイテクトSTINGSがセットカウント3−1で勝ち、明日の準決勝に駒を進めた。

 チームにとって黒鷲旗では初めての4強入りだ。会心のゲーム内容だった。準決勝の相手はV・プレミアリーグ覇者の豊田合成。だが、今のジェイテクトSTINGSに、恐れるものは何もない。
「豊田合成さんには底力がある。私たちももう一度、しっかりと準備し、明日に向けてベストを尽くしたい」
 試合後にこう話した増成監督。残るは2試合。頂点に立ち、ジェイテクトSTINGSの歴史に新たな1ページを刻みたい。

増成一志監督

第1セットを落としたが、選手は冷静に声をかけ合っていました。とくにコートキャプテンのカジースキが、日本人選手に心の強さや冷静さを示してくれた。そこも、逆転勝ちにつながった要因の一つだと思います。浅野、高橋(慎)とチームの核が出られない中、久保山や本間といった若い選手が活躍してくれました。古田もこの大会を通して、いろいろな経験を積んでくれている。そういう意味では、チームにまとまりを感じます。ただ、黒鷲旗で4強に入ったのは、チームにとって初めて。もう一度、気を引き締めて、明日の試合に臨みます。

金丸晃大

第1セットは取られたけど、自分たちのバレーはできていました。勝っていてもおかしくない内容でした。だから第2セット以降も、同じように自分たちのバレーをしようと切り替えてできました。今回の黒鷲旗は久保山や廣瀬、また新人など今まで出ていない選手が出ています。これからのジェイテクトSTINGSが楽しみですね。僕も試合に出るときは、彼らを助けてあげたいという気持ちがあります。今回の黒鷲旗は優勝するチャンスがある。ここまで来たら優勝して、引退する4人にプレゼントしたいと思います。

本間隆太

自分たちは淡々と試合をしていてもリズムに乗れません。そのため、東レさんに負けないくらいの勢いを出そうと話していました。(高橋)和人さんも落ち着いたらダメだぞと言ってくれた。みんなで声をかけ合いながらできたし、僕自身は楽しくてしょうがなかったです。相手が拾えば拾うほど、テンションが上がりました。黒鷲旗はこれまで4回ほど出場していますが、今回は初めて納得のいくプレーができている。チームも勝てています。チームとして明日の準決勝に全力を尽くし、いい結果を残したいと思います。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

チームを救った久保山。タイトル獲得のカギは若き司令塔の手腕が握っている

歓喜の輪から外れた久保山が、両手で目頭を押さえた。それほどタフな試合だった。間違いなく、この日の殊勲の一人だろう。気持ちのこもったプレーで何度もチームを盛り上げた。前日のJT戦はルーキーの渡邊に先発を譲った。筑波大学戦も単調な攻撃になってしまった。しかし、今日の東レ戦は、センター線の速攻を使ってリズムをつかんだ。ミドルブロッカーの廣瀬は81.8パーセントという高い決定率を残している。要所でサイドにトスを散らし、確実に得点を稼いだ。ブロックでも2点を奪った。「カジースキに頼るトス回しがあり、組み立て方はまだまだ甘い。そうではなく、もっとジェイテクトSTINGSのバレーを背負っていかなければいけない。『俺がやるんだ』という気持ちが足りない。彼にとって今がチャンス。もう1ステップ、2ステップ上がって、次のリーグに向けてアピールしてほしい」。増成監督の要求は厳しいが、それも期待の裏返し。初の頂点に向けて、若き司令塔の覚醒に期待がかかる。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS 東レアローズ
第1セット 23 ー 25
第2セット 25 ー 22
第3セット 25 ー 21
第4セット 25 ー 21
第5セット
日付 2016年5月3日(火)
試合 第65回黒鷲旗全日本男女選抜大会 準々決勝
場所 大阪市中央体育館
メンバー カジースキ、金丸、古田、高橋(和)、久保山、廣瀬 L本間
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