ジェイテクトSTINGS VS トヨタ自動車サンホークス

ルーキーの渡邊、柳澤がデビュー! 巧みに選手を入れ替えながら試合を支配する

 黒鷲旗は格別の思いがある大会だ。ジェイテクトSTINGSは4月26日、若山、角田、松崎、阿部の引退を発表。彼らにとってはラストマッチとなる。「このチームでできる最後の試合という位置づけは、どのチームにとっても同じ。いい結果で送り出したいという気持ちと、自分たちが持っている技術をマッチさせてどれだけできるかがこの大会では重要になる」と高橋(和)は言う。
 そして、黒鷲旗は新加入した選手にとって、デビューのチャンスでもある。この日は、渡邊と柳澤の2人がベンチ入り。スタメンは、セッター久保山、オポジット古田、両サイドはカジースキと高橋(和)、ミドルブロッカーは辰巳と廣瀬が対角を組んだ。リベロはV・プレミアリーグでコンスタントに活躍した本間だ。

 トヨタ自動車サンホークスとの初戦、ジェイテクトSTINGSは会心のスタートを切った。古田がライトから決めて先制すると、廣瀬のサーブが機能して立て続けに得点を奪う。古田の好フォローから高橋(和)もバックアタックを決めた。さらに廣瀬のサービスエースで追加点。5−0と完全に試合の主導権を握った。
 その後も確実にサイドアウトを切り、ジェイテクトSTINGSがリードを維持する。久保山も巧みにトスを散らしてアタッカー陣を牽引。廣瀬の速攻などで相手の守備を崩した。一時は15−15と追いつかれたが、チームに焦りはない。ここからはカジースキがエンジン全開。高さのあるブロックなどで21−16と引き離す。ピンチサーバーとして阿部もコートに入り、最後は古田、高橋(和)の得点で締めくくった。

 続く第2セットもジェイテクトSTINGSのペースだった。廣瀬の速攻、古田のライト攻撃などで次々と得点を重ねていく。カジースキのバックアタックで1回目のテクニカルタイムアウトを奪うと、高橋(和)のサービスエースで12−6と突き放した。ここでトヨタ自動車は1回目のタイムアウトを要求。しかし、ジェイテクトSTINGSの勢いは止まらなかった。カジースキのサービスエースに続いて古田が決めると、19−11となったところでベンチも動く。セッターを久保山からルーキーの渡邊にスイッチ。公式戦デビューを果たした。
 さらに21−12の場面で、廣瀬に代わって松崎を投入。渡邊が高い位置からトスを上げ、それを松崎が速攻を決める。松崎のブロックポイントでセットポイントを奪うと、25−15の大差で第2セットを奪った。

 第2セットの途中から入ったセッター渡邊、レフト若山、ミドルブロッカー松崎がそのまま第3セットのコートに立った。1回目のテクニカルタイムアウトは3点のビハインドで迎えたが、松崎の速攻や若山のスパイクなどで徐々に盛り返す。要所で古田、高橋(和)が決めて13−12と逆転。辰巳も安定したプレーを披露した。
 しかし、中盤にリズムを崩し連続失点。ここで気を吐いたのが、ベテランの高橋(和)だ。サービスエースを奪うと、巧みなスパイクでブレイクポイントを奪い20−20の同点に追いついた。ベテランの活躍にコートが活性化。古田もライトからキレのあるスパイクをたたき込んだ。清野もコートに立った。しかしスコアを覆すことができず、23−25でこのセットを失った。

 ジェイテクトSTINGSに下を向く選手はいない。第4セットはスタートから走った。古田が2本連続でサービスエースを決めて主導権を握った。高橋(和)の得点などで着実に得点を重ねた。中盤は若山、古田のブロックが冴えた。本間に代わって入ったリベロの興梠も、チームを後ろから支えた。
 廣瀬の速攻で15点目を奪うと、ピンチーサーバーとして入った柳澤もデビューを果たした。いきなりサービスエースを奪うと、これで完全に勢いをつかむ。高橋(和)のスパイクなどで6連続得点を奪い、22−10と大きくリード。最後は柳澤が決めて、25−13で試合を締めくくった。

 難しい初戦だったが、落ち着いた試合運びで白星をつかんだ。「どんな形であれ、勝てたことがよかった」と高橋(和)。増成監督も「もう一度、気を引き締めて、明日、明後日とチームを作っていきたい。新人を使いながら、次につながるチームのカラーを出していきます」と意気込みを語った。明日は筑波大学と対戦。厳しい戦いが続くが、チーム一丸となって乗り切りたい。

増成一志監督

この大会を最後にチームから離れる選手もいます。今日の試合は、そうした選手にも出場機会を与えたいと思いました。また、新しく加入した選手も、機会を見て起用したいと思っていた。練習時間は少なかったが、いち早くこういう雰囲気を味わってほしかった。今までチームを作ってきた選手と融合し、勝ち進んでいきたい。第3セットは取られたが、この大会は長いスパンで戦うので、ステップアップしながら戦っていきます。

高橋和人

僕や古田のようにずっと試合に出ていた選手が、今まで出場機会がなかった選手をもっとのびのびプレーさせてあげなければいけなかった。そこが反省点として残ります。トスがどうこうではなく、僕らが踏ん張り切れませんでした。ただ、動き自体は、全体的に悪くないと思っています。あとは細かいプレーを詰めていき、今までやってきたことをどう出すかが、明日からの試合で大事になってくるでしょう。

渡邊峻

緊張して吐きそうでした(笑)。いつも通りやってこいという雰囲気で、送り出されました。ただ、コートの中に入ったら全然違って、少しパニックになりました。自分の持ち味は何も出せなかった。一番下なので、とにかく声だけでも出しておけばよかった。チームとしては、まだ初戦なので、ここから徐々に上がっていくと思います。また出場機会があれば、もう少し持ち味を出せるように頑張ります。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

天皇杯の反省が生かされた。総力戦でつかんだ価値ある勝利!

どんな大会でも初戦は難しいものだ。大学生を相手に初戦で敗れた昨年の天皇杯は記憶に新しい。あのときの悔しさを忘れられない選手も多いだろう。今日のトヨタ自動車戦は、全員がボールに対して集中していた。この大会で引退する選手のためにも、簡単には負けられないという思いがあったに違いない。そこが、天皇杯との大きな違いだ。「今日は、引退する選手に出場機会を作りたいと思っていました。入れられるメンバーは全員コートに入れた。明日以降は難しいかもしれないが、新人も入れながら勝利を目指して頑張ります」と増成監督。高橋(和)の「いい結果で送り出したい」という思いは、チーム全体に共通する合い言葉だ。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS トヨタ自動車サンホークス
第1セット 25 ー 20
第2セット 25 ー 15
第3セット 23 ー 25
第4セット 25 ー 13
第5セット
日付 2016年4月30日(土)
試合 第65回黒鷲旗全日本男女選抜大会 グループ戦
場所 大阪市中央体育館
メンバー カジースキ、古田、高橋(和)、辰巳、久保山、廣瀬 L本間
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