ジェイテクトSTINGS VS パナソニックパンサーズ

会心の立ち上がり。しかし、最大6点を守り切れず失セット。全員が気迫のこもったプレーを見せるも、相手の経験が上回った

 ノックアウト方式の決勝トーナメントが始まった。ここからは負けたら終わり。すなわち、今シーズンのラストゲームを意味する。どのチームにとってもすべての試合が集大成だ。
 準々決勝の相手はパナソニックパンサーズ。アジアクラブ選手権に出場していたため、この日が初戦だった。Vリーグ王者とはいえ、付け入る隙は十分にあるはずだった。

 会心の立ち上がりだった。ブラトエフのスパイクでサイドアウトを切ると、中根がサーブで攻めて3連続得点。4−2とリードを広げた。
 さらにブラトエフのサーブが機能し、袴谷が決めてブレイク。圧巻は6−4からだ。郡が決めてサイドアウトを切ると、袴谷のスパイクで8−4。廣瀬のブロック、袴谷のライト攻撃で4連続得点。10−4となったところで、パナソニックが1回目のタイムアウトを要求した。
 その後も粘り強く戦った。しかし、相手は試合巧者のパナソニック。14−10から4連続失点を喫し、同点に追いつかれる。郡のスパイクで16−15としたものの、試合の主導権は両者の間を激しく行き来していた。
 相手のミスを見逃さないのがパナソニックの強みでもある。17−16から3連続失点。ブラトエフのバックアタックも止められた。18−19となったところで、久保山と清野を同時に投入。二枚替えで流れを取り戻す。藤中もコートに入って、守備に安定感を生み出した。19−21から3連続得点。ブラトエフのスパイク、廣瀬のサービスエースなどでついに逆転に成功した。
 しかし、あと1点が遠い。23−24と先にセットポイントを奪われた。ブラトエフが決めてジュースに持ち込むが、郡が止められて25−26。最後まで粘ったが25−27で第1セットを失った。

 第2セットのスタートから久保山が入った。接戦の末に第1セットを落としたが、ジェイテクトSTINGSの集中力は高かった。しかし、3−3から4連続失点。袴谷、郡が立て続けに止められた。
 ここで1回目のタイムアウト。流れを変えたのは袴谷だ。ライトからスパイクを決めると、サービエースでブレイク。パナソニックの独走を許さない。
 ベンチの動きも早かった。郡に代えて藤中を投入。金丸に代えて秦をコートに送り込んだ。ブラトエフのサービスエース、藤中のスパイクなどで徐々に点差を縮めていく。4点のビハインドで2回目のテクニカルタイムアウトを迎えたが、ここから4連続得点で同点に追いつく。袴谷のサービスエース、廣瀬のブロックなどでリズムをつかんだ。
 しかし、終盤はミスも続いた。袴谷のスパイクがアウトになるなど3連続失点。郡をコートに戻すが、スコアを覆すには至らない。それでも廣瀬の速攻などで確実にサイドアウトを切っていく。
 19−21の場面でリリーフサーバーの松原が登場。連続得点はならなかったが、秦のブロックで1点を取り返した。21−24。郡が決めて一度は失セットを食い止めた。しかし、反撃もここまで。22−25で第2セットを落とした。

 このまま終わるわけにはいかない。しかし、第3セットも3−6と追いかける展開。高橋監督はここで早めのタイムアウトを要求する。袴谷のスパイクなどで反撃に出たが、4−8で1回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 今日のジェイテクトSTINGSは、点差を離されても諦めない。廣瀬、秦のセンター線を軸にサイドアウトを切っていく。ブラトエフも獅子奮迅の活躍。8−12から一人で4点を奪い、一気に同点に追いついた。
 さらに13−13の場面では廣瀬が値千金のブロックポイント。チームが勢いづくかに思われた。しかし、ここから失速。4連続失点で、14−17と点差が開く。
 清野を投入してチームを活性させた。廣瀬のスパイクでサイドアウトを切った。郡、秦が続けて決めて2点差に迫る。下を向く者はチームに一人もいなかった。
 19−24でついにマッチポイントを奪われた。清野がライトから決めた。久保山もブロックを決めた。ここでパナソニックは1回目のタイムアウト。試合運びに余裕があった。Vリーグ王者の壁は厚かった。21−25で敗戦。ジェイテクトSTINGSの2018/19シーズンが幕を閉じた。

 準々決勝で大会を去ることになった。悔しさが残る。しかし、第3セットは5点のビハインドから同点に追いつくなど、気持ちは出し切った。課題ははっきりしている。
「純粋に強くなりたい」
 高橋監督はこう話す。
「強いチームでありたい。プレーはもちろん、すべてにおいて強くしたい。負けるのも嫌だし、自分が選手の時は優勝を経験することができなかった。立場は変わりましたが、そこは達成したいと思っています。強くなりたい。いえ、強くします」
 気迫のこもった言葉だ。悲願の日本一へ――。次の戦いは、すでに始まっている。

髙橋慎治監督

勝ちにいく気持ちを全員で出していこうという話をして試合に臨みました。選手たちはそれをコートの中で表現してくれたと思います。いい試合の入り方ができました。点差を離されても、このままでは終わらないという気持ちを出して戦うことができました。コートに入っていないメンバーも、しっかりと声を出してくれました。また、連休中にもかかわらず、今回の黒鷲旗も大阪までたくさんの方が応援に来てくださいました。その中でこういう結果になってしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいです。会場で応援してくださる方、会場には来られないけど応援してくださる方に「応援してよかった」と思ってもらえるチームにしていきます。今シーズンもたくさんの応援ありがとうございました。

松原広輔

引退を発表してからの大会になりましたが、変に意識してもしょうがないので普段通りの気持ちで臨みました。楽しかったですね。明治大学との試合ではバックアタックも決めました。2007/08シーズンから10年以上、いいバレー生活が送れたと思います。最後も僕らしく終われました。若い選手はこれから頑張ってくれたらいい。ケガをしないで、とにかく後悔のないようにしてほしいですね。ファンの方々には「今までありがとうございました」と言いたいです。長く応援してくれている人も多い。最近知り合った友達も、わざわざ大阪まで応援に来てくれました。本当にありがたいです。みんな忘れちゃうかもしれないけど、こんな奴もいたなということをどこかで覚えていてください(笑)。ありがとうございました。

久保山尚

昨日はプレーも雰囲気もいい状態の試合ではありませんでした。そこはそれぞれの選手が思っている部分です。今日から決勝トーナメントなので負けたら終わり。結果的に負けましたが、昨日に比べていいバレーができたと思います。点差を離されても追いつく場面がありました。ただ、追いついてからの戦い方をもうちょっと考えないと、パナソニックさんのように経験のある選手が引っ張っているチームには勝てません。経験したことを自分だけでなく、周りに伝えていくことも必要です。同じセッターはもちろん、郡や(柳澤)広平ら若い選手にも、状況に応じてやらなければいけないプレーを伝えていきたいと思っています。そうすることで、チーム全体を底上げできるように頑張ります。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

個ではなく、チームとしてどうやって点を取っていくか。課題は山積している

今シーズンを象徴するような試合だった。「第1セットを取っていれば」。そう思った人も少なくないだろう。だが、序盤で手にした6点のリードを守り切ることができなかった。理由は様々だ。だが、ここぞという場面で1点が取れなかったことが大きい。特に中盤から終盤にかけては、経験に勝るパナソニックが優勢に試合を進めていた。ジェイテクトSTINGSも一人ひとりの集中力は高かった。大事なのは、個ではなく、チームとしてどうやって点を取っていくかだ。リーグ戦が終わって2カ月、積み上げてきたものをなかなか出し切れなかったとセッターの久保山は言う。「コースを打ち分ける練習をしてきたけど、劣勢になると同じ場所にスパイクを打ってしまう。ラリーが続くとバタバタして、ボールがポトポト落ちることもあった。自分の役割とチームの決まりごとを守ることが重要です。もっとプレッシャーをかけながら練習していかないといけません」。まずは山積した課題を整理し、チーム内で共有していくこと。来シーズンの戦いは、すでに始まっている。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS パナソニックパンサーズ
第1セット 25 - 27
第2セット 22 - 25
第3セット 21 - 25
第4セット
第5セット
日付 2019年5月4日(土)
試合 第68回黒鷲旗 全日本男女選抜大会 準々決勝
場所 丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)
メンバー 金丸、ブラトエフ、郡、袴谷、中根、廣瀬 L興梠
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