ジェイテクトSTINGS VS 大分三好ヴァイセアドラー

追いかける展開から、第4セットに入って覚醒する。中根、郡を軸に多彩な攻撃を展開。集中力を切らすことなく、最後まで攻める姿勢を貫く

 平成から令和へ――。新時代の幕開けを告げる大会が始まった。第68回黒鷲旗全日本男女選抜大会。ジェイテクトSTINGSは初戦で、同じV1リーグの大分三好ヴァイセアドラーと対戦した。
 浅野、西田が日本代表に招集されていることもあり、リーグ戦とは異なるメンバーがコートに立った。セッターは中根、オポジットに袴谷が入った。金丸の対角のミドルブロッカーは廣瀬。レフトはブラトエフと郡が対角を組んだ。リベロはリーグ戦で「Vリーグ栄誉賞」を受賞した興梠だ。

 しかし、試合は予想外の展開でスタートした。これが初戦の難しさか、入り方に苦しんだ。一時は廣瀬のサービスエースでリードを奪うが、2点のビハインドで1回目のテクニカルタイムアウトを迎える。そこから3連続失点。郡のスパイクが止められ、さらにサービスエースを決められた。袴谷のスパイクなどで食らいつくが、ビハインドは最大で6点まで広がった。
 廣瀬のブロックなどで18−21、3点差まで詰め寄った。郡に代えてルーキーの藤中を投入。さらに秦を送り込んでネット際の高さを増した。しかし、勝負どころで得点を重ねられず、19−25で第1セットを失った。

 反撃が始まったのは第2セットに入ってからだ。ブラトエフのスパイクで先制した。さらにブラトエフがサービスエースを決めて3点のリードを奪う。郡に続いて袴谷が決めてブレイク。中根のトスワークも機能し始めた。6−4から1回目のテクニカルタイムアウトを挟んで4連続得点。袴谷のスパイク、廣瀬のブロックで攻撃のリズムをつかんだ。
 守備ではリベロ興梠を軸に安定感を発揮。中盤以降も順調に得点を積み重ねていく。中根も強気のトスワークを披露。郡のパイプ攻撃を積極的に使うことで、相手のブロックに揺さぶりをかける。袴谷もライトからキレのあるスパイクを叩き込み、16−13で2回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 ここで再び藤中がコートイン。守備に安定感が増し、サイドアウトの応酬を展開する。大事なところで金丸がブロックポイントを決めて突き放す。終盤は袴谷にトスを集めてセットポイント。廣瀬が速攻で締めくくり、ジェイテクトSTINGSが25−20で第2セットを取り返した。

 第3セットは藤中がスタートから入った。しかし、序盤で4連続失点。高橋監督は早くも1回目のタイムアウトを要求する。袴谷のスパイクで立て直したが、開いた点差はなかなか縮まらない。中盤は廣瀬の速攻、ブラトエフのスパイクなどで3連続得点。2点差まで迫ったが、相手の勢いが上回っていた。
 17−21の場面でリリーフサーバーの松原を投入。しかし、反撃及ばず19−25でこのセットを落とした。

 あとがなくなった。チームを救ったのは中根だ。第4セットに入っても、声でチームを鼓舞し続けた。郡のスパイク、廣瀬のブロックなどで序盤に3連続得点。さらに郡にトスを集めて、得点を積み重ねていく。郡も落ち着いたプレーを見せた。フェイントで相手コートの空いたスペースにポトリと落とす。8−3と大きくリードして1回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 要所で金丸、廣瀬のミドル陣が機能。郡のバックアタックも絡めながら、多彩な攻撃を展開していく。躍動感のある郡のプレーがチームに火をつけた。さらにブラトエフが気持ちのこもったスパイクを叩き込み16−12。流れは完全にジェイテクトSTINGSに傾いていた。
 終盤に入っても、勢いが途切れない。金丸の速攻、ブラトエフのスパイクなどでサイドアウトを切った。郡が決めて21−16とすると、ここで清野がコートに入った。最後は郡のサービスエースで25−18。セットカウントを2−2の振り出しに戻し、勝負の行方を第5セットに持ち込んだ。

 ジェイテクトSTINGSが本来の強さを取り戻した。ブラトエフのバックアタック、廣瀬のブロックで3−1。郡も高いパフォーマンスを発揮した。
 廣瀬が決めて5−4。ブラトエフがうまくブロックアウトを取って7−4。郡のサービスエースで8点目。ブラトエフが決めて9点目を取ったところで、レッドカードによる1点を失った。ローテーションは回ったが、廣瀬のサーブからブレイクポイントを奪って11−5。ここで試合が一時、中断する。
 チームは集中力を切らさない。ブラトエフのスパイクで13−7。相手のミスでついにマッチポイントを奪った。清野がコートに入った。最後は相手のスパイクがアウトになって15−8。ジェイテクトSTINGSが接戦を制した。

 初戦の難しさはあったがしっかりと勝ち切った。内容はもちろんだが、勝ち切ったことが何よりも重要だ。高橋監督が言う。
「明日の相手は大学生だが、大事なのは自分たちのバレーをすること。練習でやってきたことをどれだけ出せるか。自分たちのバレーを展開できるようにしっかり準備したい」
 対戦相手の明治大学は、サントリーとの初戦で1セットを奪っている。油断することなく確実に勝利をつかみ、決勝トーナメント進出を決めたい。

髙橋慎治監督

初戦ということで、自分も選手たちも硬さがありました。苦しい展開になってしまいましたが、結果的に勝つことができてよかったです。先発した中根は、セッターとしての仕事だけでなくチームをまとめるという役目も担ってくれました。チームとしては、リーグが終わって2カ月の間、しっかりと練習を積んできました。この大会でそれを出すことが大事だと、全員で話してきました。メンタル面が大きく、相手にリードされても必死に追いつこうとしていた。それが出たセットと出なかったセットがあり、そのまま勝敗につながったと思います。

廣瀬優希

松原さんや清野さんにとって最後の大会になるので、何としてでも勝ちたい、少しでも勝利に貢献したいと思って試合に臨みました。個人的なパフォーマンスはまだまだです。ブラトエフに負担をかけ過ぎてしまいました。ミドルの打数ももっと増やさないといけません。相手がミドルをコミットでマークしてきたこともありますが、逆に考えれば1対1で決めればいい。もっとトスを呼び込んだらよかったと思っています。松原さんには仕事の面でもお世話になりました。2人への恩返しですね。最後に2人が気持ちよく終わってくれたらと思います。

中根聡太

どの大会に臨む時も、モチベーションは変わりません。与えられたチャンスはものにしなければいけない。松原さんや清野さんなど引退選手がいる中で、自分が花道を作らなければいけないという思いもあります。攻撃の組み立てに関しては、もっと真ん中を使いたかったと思っています。ただ、相手が僕の特徴を壊すようなブロックシステムを敷いてきた。最初は僕のバレーができず困っていましたが、途中からリズムが戻ってきました。第4セットの頭にポンポンと得点を取って、ようやく慣れました。明日以降も引退選手の思いを背負って戦いたい。いい形で終わらせてあげたいと思います。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

相手にペースを握られてもズルズルと引かない。メンタルの強さが呼び込んだ貴重な勝利

短期決戦は初戦の入り方が難しい。それは昨年の黒鷲旗も証明している。覚えている人も多いだろう。早稲田大学にフルセットで辛勝したのだ。今日の大分三好戦も、序盤にリードを許した。セッター中根のストロングポイントも封じられた。ズルズルと後退してもおかしくない展開の中、粘り強く勝った要因は何か? 高橋監督は「メンタルの強さ」をポイントに挙げている。「練習でも相手にリードされて、そこから逆転することがありました。意識も変わってきた。それが今日の試合で出たと思います」。加えて、リーダーシップを発揮した中根、チームに勢いをつけた郡の存在も大きい。そして、試合が中断しても切らすことなかった全員の集中力。メンタルで勝ち切った貴重な勝利だった。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS 大分三好ヴァイセアドラー
第1セット 19 - 25
第2セット 25 - 20
第3セット 19 - 25
第4セット 25 - 18
第5セット 15 - 8
日付 2019年5月1日(水)
試合 第68回黒鷲旗全日本男女選抜大会 グループ戦
場所 丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)
メンバー 金丸、ブラトエフ、郡、袴谷、中根、廣瀬 L興梠
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