ジェイテクトSTINGS VS 大分三好ヴァイセアドラー

第2セットを奪われるが、途中出場の郡が流れを変える。内定選手の藤中、小林がデビューし、チーム一丸で勝ち切った

 集大成の一戦である。ジェイテクトアリーナ奈良で行われるホームゲーム。相手は2レグでフルセット負けを喫した大分三好ヴァイセアドラーだ。
 確かに、順位上は厳しい立場に追い込まれている。しかし、大切なのは、勝点の勘定ではない。目の前の相手に全力で立ち向かうことだ。そして、チームが一つになって戦うことである。

 ホームの声援を背に受けて、ジェイテクトSTINGSが立ち上がりから走った。秦の速攻で先制、ブラトエフも強烈なスパイクをたたき込んだ。さらに西田のスパイクでサイドアウトを切ると、ブラトエフが3本連続でサービスエースを決める。6−3。相手の勢いを完全に寸断した。
 ブラトエフがバックアタックを呼び込んで8点目。ジェイテクトSTINGSが3点のリードで1回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。サーブでリズムをつかんだ。秦のジャンプフローターサーブも機能。自らのエースを含め、5連続得点を奪った。
 西田の調子も上がってきた。スパイク、ブロックでチームに得点をもたらした。要所で浅野のスパイクが炸裂。19−10とリードを広げる。西田のノータッチエースで21−11。秦の速攻、金丸のブロックでセットポイント。チャレンジによってブラトエフのスパイクは相手の得点に覆ったが、ジェイテクトSTINGSに焦りはなかった。
 最後は金丸のブロックで25点目。「サーブ陣が相手のレセプションを崩してくれたり、サイド陣のブロックの位置がいいから止まると思っている。サイド陣のおかげです」と金丸。相手の得点を17点に抑えたジェイテクトSTINGSが第1セットを圧倒した。

 しかし、流れは一転、第2セットは僅差のまま試合が進行する。1回目のテクニカルタイムアウトは8−6でジェイテクトSTINGS。西田がスパイク、ブロックで活躍した。
 安定していたのはサーブレシーブだ。リベロの興梠はサーブレシーブ成功率が70.0パーセント。浅野、ブラトエフも60パーセント台を記録している。しかし、なかなか点差が広がらない。
 均衡を破ったのはブラトエフだ。16−14の場面では、上から鋭角にスパイクを打ち込んだ。さらに柔らかいボールを相手コートのスペースに落としてブレイク。ライトから放ったスパイクは相手のチャレンジによってアウトと判定されたが、チームの勢いは衰えてはいなかった。
 終盤は浅野が声とプレーでチームを鼓舞した。セッターの久保山もトスを託した。23−20となったところで大分三好は二度目のタイムアウト。一度は1点差に詰められたが、浅野のスパイクでセットポイントを奪った。しかし、あと1点を決め切れずジュースに持ち込まれると、最後は秦のスパイクがアウトになって24−26で失セットを喫した。

 ベンチが動いた。第3セットの立ち上がりは西田が躍動した。ブロックで先制点を奪うと、スパイク、サービスエースで着実に得点を重ねる。バックアタックも決めた。そして、8−3と大きくリードを広げたところでブラトエフに代えて郡をコートに送り出す。
 その郡が決めて9点目。コートを所狭しと駆け回って、チームを盛り上げた。金丸がブロックでそれに続いた。11−5から4連続失点を喫したが、タイムアウトで負の連鎖を断ち切った。浅野がサイドアウトを切る。さらに秦のブロック、西田のサービスエースなどで4連続得点。16−11で2回目のテクニカルタイムアウトを奪った。ジェイテクトSTINGSが完全に試合の流れを掌握していた。
 我慢の時間帯もリリーフサーバーの松原を投入するなどしてしのいだ。浅野が決めて20−15。ここから相手にミスが続いた。金丸のブロックで23点目。西田が決めてセットポイント。最後は西田のブロックで連続得点を「6」に伸ばした。25−15でジェイテクトSTINGSがこのセットを奪った。

 あと1セットも落とせない状況で、高橋監督が勝負に出た。リベロを興梠から内定選手の藤中にスイッチ。この采配が吉と出た。藤中がサーブレシーブを取り、郡が決めた。さらに浅野のブロックでブレイク。チャンスを確実にものにして、8−6で1回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 しかし、ここから3連続失点。8−9の場面で、セッターの小林もデビューを果たす。思い切った采配だが、これでチームが蘇った。郡、西田、浅野が確実に決めて、ルーキーのトスワークをフォローした。さらに西田のサービスエースで12−11と逆転に成功する。
 フレッシュなメンバーがエネルギッシュなプレーでチームを奮い立たせた。3連続失点を喫したが、下を向く者は一人もいなかった。相手のミスがあってブレイクに成功。秦、浅野が続けて決めて、16−15で2回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 ネットに近くなった小林のトスを郡が懸命に押し込んでカバーした。さらに郡がライトから決めてガッツポーズ。藤中がアンダーで上げた二段トスを浅野が決めてサイドアウトを切った。相手のスパイクが失敗になり、ジェイテクトSTINGSがブレイク。均衡が破れた。
 秦の速攻で確実に得点を重ねた。郡のスパイクで23−21。西田が決めてマッチポイントを奪った。最後はラリーになった。郡、西田のスパイクが立て続けに封じられた。小林が託したのはチームを支えてきたキャプテンだ。浅野がバックアタックを決めてフィニッシュ。25−22でこのセットを制したジェイテクトSTINGSが、セットカウント3−1で勝利をつかんだ。

 ホームゲームでジェイテクトSTINGSのバレーを展開した。そして、勝ち切った。試合後の会見で、西田はこう振り返った。
「いいバレーができました。足が動かずイージーボールを落とす場面もあったけど、郡さんや藤中さん、小林さんが入ってフレッシュ感が出ました。特に藤中さん、小林さんにとってはデビュー戦で、いい思いをしてもらいたかった。そう思うと、自分も冷静になれました。今日の勝利はすごく嬉しいし、いいチームになってきたと思います」
 別会場で行われている試合で堺が勝点3を上積みし、ファイナル6の最後の椅子が決まってしまった。ジェイテクトSTINGSは新生Vリーグを7位で終えたことになる。
 しかし、チームは戦わなければいけない。誰のために戦うのか。そして、どんな戦い方を見せるのか。ホームゲームで迎える最終戦は、チームの未来を左右する重要な一戦である。

高橋慎治監督

第1セットを取ることはできましたが、そのあとの展開が難しくなることは予想していました。第1セットはほとんどなかったサーブミスが増えてきたのも、苦しんだ要因だと思います。ただ、スタートから出た選手、途中から出た選手、あるいはコートに立っていない選手も、全員の“勝つ”という気持ちが一つになった。その意味では、いい試合だったと思います。コート上のメンバーでリズムができていなかったので、内定の藤中選手と小林選手を投入しました。難しい判断でしたが、雰囲気を作ってもらいたいと思って送り出しました。ホームゲームということで、たくさんの方に足を運んでいただき、盛大に応援していただきました。期待に応えること、そして、楽しんでもらうことが私たちの使命です。明日の豊田合成戦も、「また来たい」と思ってもらえるような試合にしたいと思います。

浅野博亮

絶対に勝たなければいけない試合でしたが、個人としてはそれほど緊張することなく、いつも通りプレーすればいいと思っていました。あとがないことは全員が知っていたので、強い気持ちを持って臨むことができたと思います。ただ、どのセットもいいスタートを切れていましたが、中盤から終盤にかけてミスが続いてしまいました。すぐに直せるものではありませんが、データに出ないミスを減らしていかないとチームとして強くなりません。勝てたことはよかったけど、反省すべき点も多い試合になってしまいました。しっかりと修正して、明日は今日よりもいいバレーができるように頑張ります。

郡浩也

第2セットを取られて相手に押されていたので、みんなに声をかけて雰囲気から変えていきたいと思ってコートに入りました。プレー自体は僕の中では悪くなかったと思っています。サーブレシーブも、積極的に取れている時はちゃんとボールが返っています。第4セットは内定選手の2人がチームを鼓舞してくれました。2人が入ることで相乗効果を生み出したと思います。でも、もっと盛り上げられる。若い力でチームを盛り上げていきたいですね。明日の試合は、チームスローガンである「ONE」の通り、ジェイテクトSTINGSらしく一つになって戦っていきたい。僕が試合に出たら、必ず盛り上げます。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

コート上で増えた会話。チームのベクトルが一つになってきた

変化を感じたのは第1セットの終盤、大分三好がチャレンジを要求した場面である。いつもなら、体をほぐすなどそれぞれが別の行動をしていたように思う。それが、今日はコート上の6人が一箇所に集まって、一人ひとりの話に耳を傾けていた。これまでの試合に比べて、選手間の会話が増えたように感じた。試合後、キャプテンの浅野に水を向けてみた。「前の週のミーティングで話していたのが、うちのチームは気合いを入れるような声しか出していないということでした。そうではなく、戦術的なことやどう動くかについてもっとコミュニケーションを取らなければいけません。もしも、見ている人に『会話が増えた』と思ってもらえたとしたら、それは自分たちが言ってきたことを実行できたということだと思います」。会話はチームのベクトルを合わせる上でもっとも有効な手段だ。いいチームになってきた。今シーズンのVリーグはあと1試合になってしまったが、悔いを残すことなく、思う存分、暴れてほしい。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS 大分三好ヴァイセアドラー
第1セット 25 - 17
第2セット 24 - 26
第3セット 25 - 15
第4セット 25 - 22
第5セット
日付 2019年2月23日(土)
試合 V1リーグ レギュラーラウンド 第26戦
場所 ジェイテクトアリーナ奈良
メンバー 金丸、ブラトエフ、西田、久保山、秦、浅野 L興梠
Photo