ジェイテクトSTINGS VS VC長野トライデンツ

ミスを減らして試合のペースをつかむ。浅野がチームに安定感をもたらし、我慢の時間も全員で乗り切った

 相手のサーブミスで25点目が入った瞬間、コートの上を安堵感が包んだ。ジェイテクトSTINGSにとって5試合ぶりの勝利。ストレート勝ちにいたっては、昨年11月25日の東レ戦以来である。苦しい試合が続いていた。それを払拭するような、会心の勝利だった。

 明らかに目の色が変わっていた。しかし、アウェイでの一戦は、決して簡単ではなかった。立ち上がりは、ホームのVC長野トライデンツに先行を許す。西田のスパイクはアウト。さらに相手のブロックに止められた。サービスエースも決められて、いきなり3点のビハインドを負った。
 反撃の口火を切ったのは秦だ。速攻を決めてサイドアウトを切ると、ブラトエフもスパイクで不穏な空気を断ち切る。3−6からジェイテクトSTINGSが3連続得点。西田がバックアタックをたたき込み、ブラトエフがサービスエースを決めた。さらに6−7から浅野が2点を連続で奪い、1点のリードで1回目のテクニカルタイムアウトを迎える。
 徐々に西田もパフォーマンスを上げてきた。セッターの久保山がサイド陣の高さを生かした攻撃を展開し、ブラトエフ、西田、浅野が次々に加点。興梠を軸にサーブレシーブも安定し、ジェイテクトSTINGSが持つ本来の粘り強さを存分に発揮した。
 4点のリードで2回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。互いに1点ずつ取り合い、17−13でリリーフサーバーの松原を投入。ブレイクポイントこそ奪えなかったが、ミドルブロッカーの秦にトスを集めて確実にサイドアウトを切っていく。福山の速攻も機能していた。
 前日の試合で活躍した袴谷を投入して勝負に出た。終盤は23−23と同点に追いつかれたが、ジェイテクトSTINGSに焦りはなかった。浅野のスパイクでセットポイント。最後はブラトエフがバックアタックを決めて、25−23で第1セットを先取した。

 久保山の頭脳も冴えていた。第2セットの立ち上がりは、秦、福山の速攻でサイドアウトを切る。福山のブロックもあって3連続得点。要所で浅野が決めてペースをつかんだ。サーブレシーブも安定し、2点のリードで1回目のテクニカルタイムアウトを奪った。
 西田がありったけの気持ちをボールにぶつけた。ブラトエフのスパイク、福山のブロックで12−8。ここでVC長野が1回目のタイムアウトを要求する。しかし、ジェイテクトSTINGSは攻撃の手を緩めない。西田に続いてブラトエフが決めて14−9。相手にミスが続き、16−10とリードを広げた。
 ここからは一進一退。相手がサーブミスを繰り返しても、ジェイテクトSTINGSは自分たちのペースをキープした。20点が過ぎてから、その勢いはさらに加速する。西田がサーブで攻め、ブラトエフが着実に加点。3連続得点を奪った。
 あとは確実にサイドアウトを切っていくだけだった。西田がバックアタックを決めてセットポイントを奪う。最後はブラトエフが強烈なバックアタックを相手コートの中央にズドンと突き刺してフィニッシュ。ジェイテクトSTINGSが相手の得点を17点に抑えてこのセットを圧倒した。

 迎えた第3セット。10分のインターバルもジェイテクトSTINGSの集中力は途切れなかった。
 ブラトエフのスパイクで先制。チャンスを確実にものにして4−3とリードを奪う。長いラリーを落とすなど3連続失点を喫したが、気持ちの切り替えも早かった。西田が積極的にトスを呼び込んで、6−8と懸命に食らいついた。
 中盤以降は両チームにとって我慢の時間が続く。リベロ興梠のサーブレシーブ成功率は80.8パーセント。堅い守備を見せた。後ろが安定すれば前も機能する。ブラトエフ、浅野、西田がスパイクをたたき込み、要所で秦のブロックが炸裂。粘り強く得点を重ねていった。
 先に均衡を破ったのはジェイテクトSTINGSだ。ベンチワークも冴えていた。ブロックを修正するために、12−14となったところで金丸を投入。さらに17−18の場面で袴谷をコートに送り込んだ。ブラトエフのサーブでプレッシャーをかけ、西田がスパイクを決めて同点に追いついた。
「スパイクが絶好調で、相手のブロックを見て体重を乗せて打つことができました。第3セットの終盤など、自分が前衛の時は、後ろの人が粘ってつないでくれたトスを『絶対に決めてやろう』という強い気持ちで打つことができました」
 こう振り返った浅野。その言葉通り、リリーフサーバーの松原が入った19−19から2本連続でスパイクをたたき込む。
 試合を締めくくったのは西田だ。22−20から立て続けにブロックを決めた。これでマッチポイント。最後は相手のサーブがミスになり、ジェイテクトSTINGSが25−21で勝ち切った。

 苦しい状況を耐え抜き、3−0で勝利を奪った。チームのベクトルが一つになった時のジェイテクトSTINGSは強い。高橋監督は言う。
「競り合った状況からそのセットをしっかり取り切れたことは、チームにとってもいいことだと思います。第3セットの劣勢の場面も、みんなが気持ちを切らさずに我慢してくれた。最後に一気に点数を取れたことは、チームにとってプラスになると思います」
 来週はファイナル6進出の行方を占う重要な試合が続く。今日の勝利をきっかけに、このまま上昇気運に乗っていきたい。

高橋慎治監督

今日はVC長野さんのホームゲームということで会場も盛り上がっていました。でも、ジェイテクトSTINGSにもたくさんの方が応援に来てくださって、非常にやりやすい雰囲気を作ってもらったと思っています。スタートから出場した浅野選手が守りの面などでうまくチームをまとめてくれました。彼を中心に、厳しい状況にも耐え切れたことが勝因だと思います。今日はサーブの意識を高めて試合に入りました。サーブミスが少なかった第2セットは、いい形で取ることができました。まだまだ苦しい状況が続きますが、目の前の一戦に照準を合わせて全力で戦っていきます。

福山汰一

昨日のパナソニック戦は少し気負いもあったように思います。負けてすぐに「明日、頑張ろう」と気持ちを切り替えることができました。そのため、今日の試合は気負うことなく、平常心で入れたと思います。今日のように途中から金丸さんが入るなど、ミドルブロッカーの層も厚くなってきました。金丸さんもいつでもいける準備をしてくれている。だからこそ、ブロックポイントがもう少し欲しいですね。チームとしては、浅野さんが入らなくてもサーブレシーブをいい状態に持っていけたら、もっとレベルの高いバレーができると思います。3レグに入って体は疲れていますが、頭を使えばミスはもっと減らせる。一人ひとりが考えながら戦っていきます。

西田有志

昨日の敗戦を踏まえ、チームを背負わなければいけないと、自分で自分に変なプレッシャーをかけていたところがありました。それをなくし、まずは自分のためにやれることをしっかりやる。それによって、チームに貢献できたらと思いました。考え方を変えたことですっきりした状態でプレーできましたが、まだまだ粗いプレーがあったのも事実です。それが今の自分の力。いろいろなアクションを起こしてそこを打開し、自分のパフォーマンスにつなげたいと思います。チームとしては、今日のようなバレーが当たり前にできることが大事で、そのための練習が必要だと思います。イージーミスをなくすことを意識して練習すれば次の試合につながる。そこを意識しながら取り組んでいきたいと思います。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

トンネルの出口が見えてきた一戦。勝ち方を身につけて、ここから一気に浮上したい

年明けから苦しい試合が続いていたが、今日の試合をストレートで勝ち切ったことでトンネルの出口が見えてきた。まだまだミスはあるものの、後々のプレーまで引きずることもなかった。第3セットは、我慢して我慢して、終盤で一気に突き放している。キャプテンの浅野は今日の試合についてこう振り返った。「VC長野さんが粘り強いバレーをして、自分たちのミスを誘うプレーをしてきました。だいぶ苦しめられたけど、意識してやったのはサーブのミスを減らしていくこと。その結果、ブロックとディグが機能して点数を取っていくことができた。これをきっかけにいいリズムを作っていきたいと思います」。勝つための試合の運び方がおぼろげながらに見えてきた。自信を確信に変え、レギュラーラウンドを一気に走り切りたい。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS VC長野トライデンツ
第1セット 25 - 23
第2セット 25 - 17
第3セット 25 - 21
第4セット
第5セット
日付 2019年1月27日(日)
試合 V1りーグ レギュラーラウンド 第20戦
場所 松本市総合体育館
メンバー 福山、ブラトエフ、西田、久保山、秦、浅野 L興梠
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