ジェイテクトSTINGS VS 豊田合成トレフェルサ

興梠がスーパーレシーブで仲間を鼓舞。ブロックとレシーブの関係も修正し、守備でチームを盛り上げた

 敗戦から一夜明け、チームは躍動感を取り戻した。一体感が生まれたと言っていい。得点を決めたら全員がコート内を駆け回り、大きな声で仲間を鼓舞した。今までとは明らかに違う雰囲気がコートから溢れていた。
 しかし、前半は豊田合成トレフェルサの組織化された守備に苦しめられる。スパイクがことごとくレシーバーの正面を突いた。内容が悪かったわけではない。ただ、気持ちが空回りした。

 それでも第1セットは、粘り強く戦った。いいところで中根、西田がブロックを決めて、チームに勢いを引き寄せる。ブラトエフも巧打で得点を加算。サービスエースも決めて、一時はビハインドを2点まで縮めた。
 気を吐いたのが西田だ。気迫のこもったスパイクを相手コートに何度もたたき込んだ。セッター中根のトスワークも機能。間隙を縫ってブラトエフにトスを上げ、懸命に食らいついていく。19−25で第1セットを落としたが、反撃の可能性を感じさせる内容だった。
 しかし、続く第2セットも豊田合成に奪われる。立ち上がりに3失点。ここで高橋監督はタイムアウトを要求。流れを取り戻しかけたがラリーが奪えない。特に2−5の場面、ブラトエフのサーブから始まったラリーは壮絶だった。ブロックでワンタッチを取って相手のスパイクをつないだ。正面に来たボールは体を張って上げた。西田のスパイクで応戦。ボールが落ちない。リベロの興梠が身を挺してボールに食らいつく。最後は浅野のスパイクがブロックされた。全員が肩で息をしていた。浅野はしばらく起き上がれなかった。ブラトエフは誰かの手を借りなければ立ち上がれなかったほどだ。勝負に「たられば」は禁物だが、この1点を取っていれば違う展開になっていたかもしれない。
 金丸のブロックですぐに反撃。拮抗した展開が続いた。11−15となったところで、早めにリリーフサーバーの松原を投入する。終盤は浅野のバックアタックをきっかけに3連続得点。西田、秦が決めて2点差まで追い上げた。22−25でこのセットを失ったが、会場のボルテージは一気に高まった。

 反撃は第3セットから始まった。立ち上がりは一進一退。ジェイテクトSTINGSは秦にトスを集めてサイドアウトを切っていく。ブラトエフもバックアタックをたたき込んだ。中根の持ち味である速攻とパイプ攻撃が効果的に機能していた。真ん中が生きれば、サイドが楽になる。浅野が高い打点からスパイクを決めた。ブラトエフの強打も炸裂した。
 6−8で1回目のテクニカルタイムアウトを迎えたが、両者に大きな力の差はない。西田のバックアタックでサイドアウトを切ると、秦のブロックで9−9の同点に追いついた。サーブレシーブが乱れてビハインドが3点に広がったが、タイムアウトで嫌なムードを断ち切った。我慢の時間が続く。金丸の速攻でサイドアウトを切り、体重を乗せた西田のスパイクが相手コートにドスンと突き刺さる。14−16でサーブが回ってくると、西田がエースを取って1点差。相手からミスを誘って、ついに同点に追いついた。
 袴谷の投入も功を奏した。相手のスパイクを興梠がつなぐと、西田が柔らかいボールを相手コートに落として逆転に成功。さらに18−18の場面では、コートの外に飛び出したボールを、広告ボードをジャンプして乗り越えた興梠が懸命に上げる。これを浅野のブロックで得点につなげた。
 終盤に入ってもジェイテクトSTINGSの集中力は落ちない。西田がスパイク、ブロックで活躍して4連続得点。浅野のサービスエースも決まって一気に走り始める。西田のスパイクでフィニッシュ。ジェイテクトSTINGSが25−21でこのセットを奪い返した。

 第4セットは、ブラトエフのスパイクでジェイテクトSTINGSが先制する。秦もブロックで活躍。浅野も好調を維持していた。西田のスパイクをきっかけに4連続得点を奪い10−8。ブラトエフ、秦が高い壁になって相手の攻撃陣にプレッシャーをかけた。
 全員のプレーに自信がみなぎっていた。秦、西田がスパイクを決めると、ブラトエフがサービスエースを決めて13−11。ジェイテクトSTINGSがペースを握った。さらに金丸、浅野のスパイクで確実に得点を積み重ねる。西田がサーブで攻めると、バックライトから放った強烈なスパイクを相手コートの空いたスペースに突き刺した。
 豊田合成はここで2回目のタイムアウト。要求したチャレンジが判定不能になる不運はあったが、ジェイテクトSTINGSに焦りはない。袴谷、松原を投入して、さらに攻撃の手を強めていく。
 西田が決めて22−19。浅野のブロックでブレイクポイントを奪った。相手コートの深い位置を狙った中根のサービスエースでセットポイント。一度はサイドアウトを切られたが、西田のスパイクでフィニッシュ。ジェイテクトSTINGSがこのセットを25−20で奪い、勝負の行方を第5セットに持ち込んだ。

 流れはジェイテクトSTINGSに傾いていた。一人ひとりが与えられた役割を全うしていた。運命の第5セット。立ち上がりはブラトエフが懸命に右腕を振り抜いた。相手は守備を固めてくるが、西田が強烈なバックアタックを打ち抜いた。このままでは終われない。
 浅野がインナー、ストレートとスパイクを打ち分けて5−5の同点に追いつく。中根も巧みなハンドリングを見せ、ブラトエフ、秦が得点を重ねていった。
 しかし、相手は試合巧者の豊田合成だ。ジェイテクトSTINGSは大事な場面でサーブレシーブを失敗。8−10となったところで1回目のタイムアウトを要求する。ブラトエフのスパイクでサイドアウトを切ったが、ブレイクポイントが奪えない。ミスも出た。金丸の速攻で11−13。しかし、反撃もここまで。最後は相手にサービスエースを決められて、11−15で敗れた。

 タフな一戦だった。驚異の粘りも見せた。勝ち切れなかったことに反省は残るが、勝点1は手に入れた。
「セットカウント0−2と追い込まれた状況から立て直し、フルセットに持ち込めたことはよかったと思います。ただし、それをスタートから出さなければいけません。一番難しいかもしれないけど、チームが強くなるためには大事なこと。みんな高い能力は持っている。それを出し切れるかどうかでセットの勝ち負けが決まります」
 試合後にそう振り返った高橋監督。大事なのは、今日の一戦を浮上のきっかけにつなげることだ。そうすれば、勝点1の価値は2倍にも3倍にも増幅する。

高橋慎治監督

セットカウントが0−2になった瞬間に、「このままじゃダメだ」という声が選手からあがっていました。第1、2セットはミスが多かったので、まずはそこを修正すること。1点1点を大事にすることで、簡単に決めさせないケースも増えてきた。そういうところが、第3セット以降は出たと思います。前日の堺戦に比べて、1日でこれだけ内容が変わるというのは、メンタルが大きいと思います。相手を圧倒するつもりで向かっていかなければいけません。最近の数試合はいい時と悪い時の差が大きく、そこが課題になっています。来週のJT戦は、いい時のバレーを出していくこと。そこを出し切って、3レグにつなげられるように頑張ります。

興梠亮

選手同士でミーティングをして、苦しい時に「何をやらないといけないか」を全員で話し合いました。第一は、気持ちで負けないようにすること。今日の第1、2セットはうまくいかなかったけど、第3セットからは気持ちの面で負けなかったと思います。チームとして、そこはプラスに考えていい。第2セットの後はみんな少し沈んでいたけど、話し合ったことをもう一度やろうという話をしました。ブロックとディグの関係も、より詰めることができたと思います。勝点1しか取れませんでしたが、フルセットに持ち込めたことは大きいし、みんなで戦う姿勢が出ていました。来週のJT戦もこの勢いでプレーし、3レグにつなげたいと思います。

浅野博亮

昨夜、選手だけで集まってミーティングをしました。最近の試合は、単純に1点の重さを忘れがちになっている。簡単なミスも多い。1点1点に集中していこうということと、西田とブラトエフの調子が悪い時にチームとしてどうすればいいかという話をしました。第1セットは、みんな必死になり過ぎて、周りが見えなくなっていたような気がします。第5セットは、勝たなければいけないという思いが強くなり、ミスが出てしまいました。来週対戦するJTはブロックがいいチームで、ただスパイクを打っているだけでは勝てません。これまで練習でやってきたことをしっかり出し、いい流れを3レグにつなげていきたいと思います。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

諦めない気持ちを取り戻し、第3、4セットを奪取。興梠のレシーブもみんなの心に火をつけた

今日までのレギュラーラウンド17試合の中で、2セットを取られてから追いついたのは今シーズン初めてのパターンである。その点では、チームに粘り強さが芽生えたと言っていい。前日の堺戦も、大きな糧になった。「前日のミーティングで絶対に諦めないという話をしました。それがいい流れを持ってきた。メンタルが大きいと思います」とキャプテンの浅野。第3セットにスーパーレシーブでチームを鼓舞した興梠も、「タイミングが合って、うまく上げることができました。あそこでアタッカー陣が決めてくれたから、チームの雰囲気も明るくなった」と振り返っている。それだけではない。第3セット以降は、ブロックとディグの関係がよくなった。中根のトスワークにも落ち着きが出た。第1、2セットで浮き彫りになった課題を修正した証拠である。チームが進むべき方向は間違っていない。あとはちょっとしたきっかけだ。来週のJT戦を2レグの集大成にし、3レグの巻き返しにつなげたい。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS 豊田合成トレフェルサ
第1セット 19 - 25
第2セット 22 - 25
第3セット 25 - 21
第4セット 25 - 20
第5セット 11 - 15
日付 2019年1月13日(日)
試合 V1リーグ レギュラーラウンド 第17戦
場所 福山市緑町公園屋内競技場(ローズアリーナ)
メンバー 金丸、ブラトエフ、西田、中根、秦、浅野 L興梠
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