ジェイテクトSTINGS VS パナソニックパンサーズ

1セットダウンの第2セットにカジースキが復帰。中根、西田のルーキーも躍動。全員が最後まで粘り強く戦った

 いよいよ決戦の時を迎えた。第67回黒鷲旗のファイナル。舞台は丸善インテックアリーナ。相手は三冠を狙うパナソニックパンサーズだ。会場は独特の緊張感に包まれていた。午後1時30分、運命のホイッスルが鳴り響いた。

 今シーズンの集大成だ。ジェイテクトSTINGSは立ち上がりから攻めた。相手は西田を警戒していた。セッターの中根は中央ゾーンの速攻を軸に攻撃を展開。福山のスパイクなどでサイドアウトを切る。要所で浅野も決めた。1回目のテクニカルタイムアウトを3点のビハインドで迎えたが、チームの集中力は高かった。
 西田のスパイクでサイドアウトを切ると、金丸のブロックが炸裂。7−9と2点差に迫る。西田がサーブで相手を崩し、郡がダイレクトスパイクをたたき込む。10−11。追いかけるパナソニックの背中が見えた。
 しかし、ここから3連続失点。試合巧者のパナソニックは、簡単にペースをつかませてくれない。セッターの中根が言う。
「パナソニックさんはデータをしっかり使ってくるチームです。僕が出場したこれまでの2試合は配球がクイックとパイプに偏っていて、それも相手はわかっていた。でも、そこから攻めていこうと思っていました。通らなかったらそこで考えればいい。アナリストもその都度、伝えてくれるので、それを頼りにトスを上げていました」
 強気のトスワークが相手に脅威を与えた。15−18から3連続得点。郡が難しい二段トスを決めて、チームに勢いを呼び込む。19−24。相手のサーブはアウトになったかに思われたが、チャレンジによってスコアが覆った。惜しくもこのセットを落としたが、内容が悪かったわけではない。むしろジェイテクトSTINGSのポテンシャルを示したセットだったと言っていいだろう。

 背番号「1」が帰ってきた。ケガで戦列から離れていたカジースキが、第2セットのコートに入ったのだ。だが、このセットも一進一退の展開が続く。
 金丸の速攻でサイドアウトを切ると、浅野が決めてブレイク。さらに西田のスパイクでラリーを制した。中根が巧みにトスを散らして得点を重ねていくと、1点のビハインドで1回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 中盤は西田が真骨頂を発揮。中根も西田にトスを託した。“信頼”という力がチームに溢れていた。一枚岩になったジェイテクトSTINGSが、高い壁に立ち向かっていった。
 13−17とリードを許したが、カジースキのスパイクなどで3連続得点を奪う。再び1点差に詰め寄った。浅野が前衛に回ってくると、高さのある郡にスイッチ。福山の速攻などで僅差をキープした。3点のビハインドでこのセットを落としたが、両者の実力にほとんど差はなかった。

 この日も西田は絶好調だった。
「第1セットは自分が縮こまってしまったが、中根さんのトスは伸びていたし、悪いトスはなかった。相手のブロックが視界に入るようにステップし、クビアクさんがどっちを閉めてくるかを打つ瞬間まで考えていました」
 ジェイテクトSTINGSの反撃が始まる。第3セット、カジースキのスパイクで先制すると、強烈なサービスエースを突き刺して5−3とリード。金丸のブロック、西田のスパイクなどで確実にサイドアウトを切っていく。
 10−11となったところでセッターを中根から渡邉にスイッチ。さらに中盤はジェイテクトSTINGSのブロックが冴えわたった。カジースキの攻めるサーブも功を奏した。浅野、福山が立て続けに相手のスパイクをブロック。カジースキもサービスエースを決め、5連続得点を奪う。15−12とスコアを一気にひっくり返した。
 しかし、ここから5連続失点。アウトになったかに思われた相手のスパイクも、チャレンジによってスコアが覆った。福山のブロックなどで17−17。終盤は互いに1点ずつを取り合う展開になる。
 ジェイテクトSTINGSは浅野がスパイクを決めると、西田もフェイントで加点。カジースキ、福山とバランスよく得点を重ね、パナソニックを追随する。福山のブロックで23−23。そして、カジースキが会心のバックアタックを決めてついにリードを奪った。
 セッターの中根がスパイクを打って止められる場面もあったが、金丸の速攻ですぐに気持ちを切り替えた。カジースキが技ありのスパイクを決めて26−25。最後は西田が決めて、ジェイテクトSTINGSがこのセットを取り返した。

 第4セットは西田のブロックで先制した。カジースキのスパイク、浅野のブロックで5−4。ここから3連続失点を喫したが、カジースキのバックアタックでブレイクポイントを奪い、7−7の同点に追いついた。
 攻める姿勢が光った。浅野がサーブで攻めて、ふわりと浮いたボールをカジースキがダイレクトでたたき込む。ミスもあったが、それも攻める意思の表れだ。浅野も積極的にバックアタックを呼び込んだ。16−14で2回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 しかし、相手は試合巧者のパナソニックだ。終盤に入り、徐々にギアを上げてくる。19−21とリードを2点に広げられ、ジェイテクトSTINGSは2度目のタイムアウトを消化した。
 西田が決めて21−23。ここでワンポイントブロッカーの袴谷がコートに入った。西田のスパイクでブレイクポイント。さらにチャレンジでカジースキのスパイクが認められて23−23の同点に追いつく。
 最後はエースにトスが集まった。カジースキもトスを呼び込んだ。勝負に出た。しかし、カジースキのトスが止められて24−26。セットカウント1−3で敗れた。

 6日間にわたる戦いは、ジェイテクトSTINGSの準優勝という結果で幕を閉じた。初の日本一まであと一歩だった。しかし、選手の首にかけられた銀メダルは、誇らしげに光り輝いていた。
 西田は敢闘賞と若鷲賞(最優秀新人賞)をW受賞。浅野と同時にベスト6にも選ばれている。
「今回の黒鷲旗は最終日まで残ることができ、長いシーズンになりました。V・プレミアリーグもそうですが、黒鷲旗にも毎日のように会場まで足を運んでくださる方がいました。ジェイテクトSTINGSは応援の力を感じられるチームだし、個人的にも力になっています。これからも応援をよろしくお願いします。来季はさらに順位を上げ、みなさんを盛り上げられるように頑張ります」
 浅野の言葉にあるように、チームは応援の力で日々、成長を遂げた。そして、頂点に立てるチームだということを証明した。
 今季の戦いはすべて終わった。まずは疲れた羽を休めてほしい。そして、新たなチャレンジへと向かっていきたい。

アーマツ・マサジェディ監督

まずはファイナルまで戦ってくれた選手に感謝します。6試合もあり、ケガ人も出る中、最終日まで残ってくれた。そして、負けはしたけど、いい試合をしてくれました。ファイティングスピリットも見せてくれました。疲れた中でも、若い選手は自信を持って戦い抜きました。いつも言っていることですが、大事なのはファンのためにコートに入ることです。ファンがいなかったら、試合もつまらなくなります。ファンのためにチームを作ることが大事と言ってもいいでしょう。今日もみんなが一つになって、2位という結果を残すことができました。心から感謝します。

浅野博亮

決勝戦に関しては、完全に経験や勝負どころの差が表れました。特にセット後半の20点以降。スパイクをブロックで止められ、クビアクに何度も決められました。相手は点を取るべきところで取ってきました。第2セットからは、(カジースキ)マテイが先頭に立ってプレーしてくれました。それによって、チーム全体がうまく回ったと思います。黒鷲旗全体を通して見ると、交代した選手が活躍したという意味で、チームの底上げができたという点ではよかったと思います。若手が出てきて、この経験ができたことは大きい。これから一人ひとりの意識も高くなると思います。この大会で、今季のすべての試合が終了しました。応援ありがとうございました。

西田有志

いい環境で、今季のラストを迎えることができました。僕自身、チームに入ってそれほど時間は経っていませんが、「ここまで固まるんだ」とチームの成長を感じることができました。こんなに温かいチームがあるんだなと実感しました。今日の試合は自分も、またチームも思い切ってできていました。目標が一つになり、全員が同じところに向かっていくことで一つになれたと思います。パナソニックさんは数々の修羅場をくぐっているので、その経験の差が結果になって表れました。この決勝戦を戦えてよかったと思います。来季に向けて、もっと強いチームにしていきたい。そして、自分もチームも、たくさんの人から応援されるようになりたいと思います。日々の練習や生活をさらに見直して、チームをもっと濃い色にしていけたらいいなと思います。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

ルーキーを中心に、進化し続けたジェイテクトSTINGS。思いは、必ず実を結ぶ

この悔しさを来季にどうつなげたいですか? 試合後の記者会見で聞いた。中根の言葉が印象的だった。「今季でチームを離れる選手がいます。アーマツ監督をはじめ、選手を信じてコートの外から支えてくれる人もいる。コートに入っている選手は、そのために戦わなければいけないと感じました。それが根底にあるからチームスポーツです。来季はそういうところからチームを作っていきたい。そこがあれば、必然的に結果はついてくると思います」。今のジェイテクトSTINGSを象徴している言葉だと言えるだろう。たしかにチームはルーキーを中心に、日々、進化していった。それは、黒鷲旗の6日間だけでも顕著だった。しかし、それを支えているたくさんの人の思いを忘れてはいけない。今季も日本一を逃したが、近い将来、それを達成できる日が来るだろう。思いは、必ず実を結ぶ。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS パナソニックパンサーズ
第1セット 19 ー 25
第2セット 22 ー 25
第3セット 27 ー 25
第4セット 24 ー 26
第5セット
日付 2018年5月5日(土)
試合 第67回黒鷲旗全日本男女選抜大会 決勝
場所 丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)
メンバー 金丸、福山、郡、西田、中根、浅野 L興梠
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