ジェイテクトSTINGS VS FC東京

36−34で壮絶な第1セットを制する。ベテランが守備でサポートし、若い力が攻撃で躍動した

 黒鷲旗はいろいろな人の思いが交錯する大会である。この大会でチームを去る人、この大会を飛躍のきっかけにする人、自分以外の誰かのためにコートに立つ人もいるだろう。すべてのチームが、そうした様々な思いと一緒に戦っている。
 ジェイテクトSTINGSも同じだ。一日でも長くこのチームで戦うため、FC東京との準決勝に挑んだ。

 チームに緊張感はなかった。雰囲気を作ったのは、郡、中根、西田のルーキーだ。立ち上がりから、この3選手を軸に攻撃を組み立てていく。中根が硬軟織り交ぜたスパイクをたたき込み、西田がサービスエースを決めて5−2。ジェイテクトSTINGSが幸先よく主導権を握った。
 しかし、FC東京の勢いに押されて6連続失点。1回目のテクニカルタイムアウトを3点のビハインドで迎える。
 ジェイテクトSTINGSは、興梠、浅野の2枚でサーブレシーブに入った。郡の守備への負担を軽減させるのが狙いだ。金丸もいいところでブロックをたたき込む。西田が確実にサイドアウトを切って12−16。ジェイテクトSTINGSの反撃は、2回目のテクニカルタイムアウトから始まった。
 福山が速攻、ブロックを続けて決めてブレイクポイントを奪う。郡も積極的にトスを呼び込み、強烈なバックアタックを放った。勝負どころでは西田にトスが集まった。サービスエースを含め、西田が立て続けに得点を重ねていく。相手に先にセットポイントを奪われたが、郡がサービスエースを決めて、ついに24−24の同点に追いついた。
 相手に先行を許す展開だったが、ジェイテクトSTINGSは粘り強く食らいついていった。浅野も難しいトスをうまく決めた。郡のバックアタック、西田のスパイクなどでサイドアウトを切る。
 9回も相手のセットポイントをしのいだ。31−31。金丸が会心のブロックを決める。ようやくアドバンテージを握った。35−34。最後は相手のスパイクがアウトになり、ジェイテクトSTINGSが接戦をものにした。

 チームに勢いが増した。第2セットも同じ布陣でスタート。序盤から西田が大車輪の活躍を見せる。破壊力抜群のスパイクはもちろん、ブロック、サービスエースで次々と得点を重ねていく。相手の隙を突いて、郡がバックアタックで援護射撃。相手に攻撃の的を絞らせず、8−6で1回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 サイドに相手の意識を集めることで、中央からの攻撃も決まりやすくなる。金丸の速攻でサイドアウトを切った。さらに、西田のスパイクを皮切りに、浅野のバックアタック、福山のブロックなどで9−8から4連続得点。その後はサイドアウトの応酬となったが、セッターの中根が終始、落ち着いた試合運びを見せた。
 西田、郡のサイド陣を中心に確実に得点を積み重ねた。西田が決めて18−14となったところでFC東京は2度目のタイムアウトを要求する。その後も西田が高い決定力を発揮。24−18。最後は郡がサービスエースを決めて、ジェイテクトSTINGSが2セットを連取した。

 いやが上にも期待が高まっていく。ジェイテクトSTINGSは目の前の1点に集中していた。第3セットは、浅野のバックアタックがチームに勢いをもたらした。西田がサーブで相手を崩し、郡が思い切りよくスパイクを打ち込んだ。福山がブロックを決めて7−3としたところで、FC東京は早くもタイムアウト。ジェイテクトSTINGSが4点のリードで1回目のテクニカルタイムアウトを奪った。
 冷静かつ大胆に、中根が攻撃を組み立てていく。大事な場面では、金丸が速攻でサイドアウトを切った。13−9で西田にサーブが回ってくると、サービスエースでチームに流れを引き寄せる。さらに西田がサーブで攻めて、福山がブロック。6点のリードを広げた。
 袴谷がピンチサーバーで入って、ブレイクポイントを奪った。金丸にトスを集めてサイドアウトを切る。得点を奪っても、懸命にコミュニケーションを図る中根の姿が印象的だ。こうしてチームを構築してきた。
 西田が決めて23−19。会場のムードがジェイテクトSTINGSを後押しした。郡のスパイクでマッチポイント。最後はやはりこの男。西田が決めて25−20とし、セットカウント3−0でファイナルの切符を勝ち取った。

 勝った瞬間は喜びよりも、むしろ安堵の空気が流れていた。ようやくたどり着いたファイナルの舞台だ。あと一日、このチームで戦うことができる。
「全日本にいる時から、今回の黒鷲旗は気合いが入っていた。決勝に行けてうれしいけど、『やっと来たな』という感じ。コンディションも落ちていたし、しんどかった部分も多かったけど、何も考えずに思い切ってプレーして、結果がどうなるかを楽しみにしたい」
 こう意気込みを話した西田。パナソニックとの決勝戦は13時30分スタート。ジェイテクトSTINGSの歴史に新たな1ページが刻まれる。

アーマツ・マサジェディ監督

選手が素晴らしい戦いをして、私をファイナルの監督にしてくれたことに感謝します。「ありがとう」という言葉しか出てきません。選手たちはうまく試合に入り、最大限の力を発揮してくれました。今日は中根をスタートから起用しましたが、彼は自分が持っている力、そして、何が役割かを知っています。周りの選手とコミュニケーションを取って、うまくサイドアウトを切ってくれました。パナソニックとの決勝戦に勝つためには、サーブが重要になるでしょう。サーブで相手にプレッシャーをかけることができれば、勝つチャンスはある。チームに初の優勝をもたらし、将来に残したいと思います。

金丸晃大

新人も入ってチームは若くなりましたが、今日は「スタートから楽しんでいこう」という形で入りました。リラックスして試合ができたと思います。速攻の決定率や打数は、ジェイテクトSTINGSの課題でもありました。V・プレミアリーグが終わってから1カ月ちょっとの間、速攻をどれだけ使うかを課題にして練習してきました。サーブレシーブにもよりますが、セッターの久保山、渡邉、中根がうまく速攻を使って、幅広い攻撃を展開してくれたと思います。黒鷲旗は一年の集大成であり、また、引退する選手やスタッフがいる中で、その人たちと一緒にできる最後の大会です。2年前は銀メダルでしたが、今回は金メダルを首にかけて終わらせてあげたいと思います。

浅野博亮

昨日の試合でカジースキがケガをした中、中根、郡の2人が出だしから活躍してくれたことが勝因だと思います。また、全日本の合宿で日々成長している西田が大活躍したことでチームが引き締まった。若手の活躍が光った試合でした。中根はすごくコミュニケーションを取るセッターで、誰に対しても自分の意見をぶつけるし、相手の意見も引き出そうとします。それが、うまく機能している理由だと思います。前回の決勝戦は、自分はケガで出場していませんでした。ただ、試合を見てこの舞台に立ちたいと思ったし、優勝できなかった悔しさもあります。若い選手が多いので、今日のようにプラス思考を持ちながら、引かずに攻めるというプレースタイルで波に乗っていきたいと思います。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

郡の負担を減らすため、2人でサーブレシーブ。作戦が功を奏し、第1セットを競り勝った

第1セットは、サーブレシーブを浅野と興梠の2人で取った。もう一人のウイングスパイカー、郡にかかる守備の負担を減らすためだ。できるだけ攻撃に専念させたかった。浅野が言う。「セッターの中根もそれを感じ取っていて、(自分には)あまりトスを上げなかったと言っていた。僕も攻撃したいという気持ちはあったが、作戦に徹するという意味でも守備に集中できた」。それでも、ラリーになれば浅野にもトスは上がってくる。背後から上がってくる難しいトスをうまく決め切った。「ハイボールに対して、打ち方をうまく調整できたと思う。力任せにならず、相手のブロックをよく見て弾くことができた。スパイクを打たなければいけないという気持ちがなかった分、リラックスしてできたと思います」。作戦は功を奏した。特にジュースに入ってからは、郡が思い切りよくスパイクを決めている。勝利の立役者の一人と言えるだろう。明日の決勝戦も、カジースキの出場は微妙だ。しかし、臆することはない。若い力で思い切りコートを駆け回り、目の前にそびえる高い壁を崩したい。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS FC東京
第1セット 36 ー 34
第2セット 25 ー 18
第3セット 25 - 20
第4セット
第5セット
日付 2018年5月4日(金・祝)
試合 第67回黒鷲旗全日本男女選抜大会 準決勝
場所 丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)
メンバー 金丸、福山、郡、西田、中根、浅野 L興梠
Photo