ジェイテクトSTINGS VS JTサンダーズ

中根、郡、西田のルーキーが躍動。2度のアクシデントに耐え、接戦を制する

 試合が終わった瞬間、緊張から解放された郡の目から涙がこぼれ落ちた。無理もない。途中からコートに入り、想像を絶するプレッシャーがその両肩にのしかかっていた。熾烈を極めた戦いを物語るシーンだった。
 第67回黒鷲旗の準々決勝。ジェイテクトSTINGSはJTサンダーズとの一戦に挑んだ。

 第1セットは23−25で失った。だが、簡単にやられたわけではない。今季のV・プレミアリーグで一度も勝てなかったJTに対し、立ち上がりから攻めた。カジースキがスパイク、ブロックで活躍した。西田も最初からエンジン全開。6−6の場面でサービスエースを奪い、チームに勢いをつける。
 セッターの渡邉が巧みにトスを散らして攻撃を組み立てた。リベロの本間も守備だけでなく、声で攻撃に貢献した。最大で4点のビハインドを喫したが、浅野のバックアタックなどで3連続得点を奪い、16−17と1点差に迫る。18−19の場面では、アーマツ監督が英断を下した。セッターを渡邉から中根にスイッチ。ルーキーに攻撃のマネジメントを託したのだ。
 その期待に中根が見事に応えてみせる。浅野、カジースキのバックアタックを使ってサイドアウトを切った。惜しくも失セットを喫したが、ジェイテクトSTINGSが互角以上の戦いを見せていた。

 第2セットも、ベンチの動きは早かった。3連続失点で2−4となったところで、早くも中根を投入する。金丸のBクイックが機能した。西田も豪快にスパイクをたたき込んだ。一時は3点のビハインドを喫したが、中根のブロックで9−10と1点差に迫る。
 その後は、サイドアウトの応酬だ。互いに1点ずつ取り合った。ジェイテクトSTINGSは福山の速攻が冴えわたった。要所で浅野も決めた。追いかける立場のジェイテクトSTINGSだったが、相手にミスが出て17−17の同点に追いつく。ピンチサーバーの袴谷がコートに入った。攻める。相手のサーブレシーブを崩した。カジースキがダイレクトスパイクを決めてブレイク。19−18とついにリードを奪った。
 西田の強打が炸裂した。ブロックでも得点を奪った。これでリードを2点に広げた。23−22の場面で郡がコートに入った。最後は、その郡がブロック。25−22とし、セットカウントを1−1の振り出しに戻した。

 第3セットは、中根がスタートから入った。しかし、1−5とJTに先行される。ここでアーマツ監督は1回目のタイムアウトを要求した。反撃のきっかけを作ったのは西田だ。ノータッチエースを奪って5−6。さらに西田のバックアタックでサイドアウトを切ると、カジースキ、浅野が続いて3連続得点。8−7と逆転して1回目のテクニカルタイムアウトを奪った。
 その後は、カジースキが獅子奮迅の活躍。強烈なサービスエースを決めて14−11とリードを広げた。要所で福山が速攻を決めた。西田も真骨頂を発揮。2本連続でサービスエースを決めて、完全にこのセットの主導権を握る。
 浅野、福山のスパイクで確実にサイドアウトを切った。中根のトスワークも冴えていた。西田が剛と柔を巧みに使い分けて得点を重ねていく。
 郡、袴谷をコートに送り込んで、このセットを締めくくりにいった。しかし、24−19から4連続失点、1点差まで迫られる。それでも、チームは落ち着いていた。福山が速攻を決めて25−23で終止符。逆転でセットカウント2−1とし、勝利に王手をかけた。

 ジェイテクトSTINGSに1回目のアクシデントが起きた。第4セットに入ってすぐのことだ。カジースキが負傷。代わって郡がコートに入った。
 我慢の時間が続いた。ジェイテクトSTINGSは粘り強くサイドアウトを切っていく。西田のバックアタック、福山のブロックで得点。さらに郡のスパイクを皮切りに5連続得点。西田、金丸のブロックも機能し、10−7とリードを広げた。
 その後は一進一退。ジェイテクトSTINGSは3点のリードをキープするが、サーブレシーブが乱れて3連続失点。18−18の同点に追いつかれる。郡のスパイクでブレイクポイントを奪うが、そこから4連続失点。22−24と相手にセットポイントが入った。
 ジェイテクトSTINGSも脅威の粘りを見せる。金丸がサイドアウトを切ると、西田が渾身のスパイクを決めて24−24。25−27の僅差でこのセットを落としたが、両者の実力差はなかったと言っていい。

 悪い流れを引きずらないのが、今のジェイテクトSTINGSの強さだ。郡も気持ちを切り替えてスパイクを決めた。西田が続いた。攻めるサーブがネットインを誘った。
 しかし、5−6になったところで、ジェイテクトSTINGSに2回目のアクシデントが起きる。リベロの本間が負傷し、興梠に代わった。奮起したのが浅野だ。粘り強くスパイクを決めて8−6とリードを広げた。勢いを途切らせない。郡もバックアタックを決めた。
 中根も集中していた。福山の速攻でサイドアウトを切る。14−11とマッチポイント。連続失点で1点差に追い上げられたが、タイムアウトで流れを切った。最後は相手のサーブがネットにかかって15点目。JTの反撃を12点に抑え、ジェイテクトSTINGSが準決勝進出を決めた。

 会心の勝利だ。2連覇中のJTを止めた。我慢の時間を耐えしのぎ、チャンスを確実にものにした。前日の敗戦から見事に這い上がってきた。
 準決勝の相手は、豊田合成をフルセットで下したFC東京だ。今のジェイテクトSTINGSに失うものは何もない。全力で戦ったその先に、明るい未来は見えてくる。

アーマツ・マサジェディ監督

必ず勝つという気持ちが強く、チームが一つになりました。昨日の東レ戦は、内容はよかったけど負けた。ブロックやディフェンスが悪かったわけではありません。気持ちを切り替えて、今日の試合を勝ちにいきました。若い選手を多く起用しましたが、一人ひとりがしっかりと準備をして臨んでくれました。セッターの中根はマネジメント能力が優れています。うまくサイドアウトを切ることができる。強い気持ちも持っています。昨日はサーブで27回のミスがありました。1セット分です。今日はサービスエースで相手を苦しめました。明日も必ず勝ちにいきます。

郡浩也

カジースキの故障でコートに入りましたが、心がけていたのはベストを尽くすことです。僕のベストは、もちろんスパイクもありますが、何よりもコートで喜びを表現すること。雰囲気づくりのために、会場を巻き込むくらい喜ぼうと思っていました。第4セットの最後にサーブレシーブを失敗した時は、正直、目の前が真っ暗になりました。すぐには切り替えられませんでした。でも、ベンチで落ち込んでいる自分に、みんなが肩を叩いて励ましてくれた。それで、「よし、切り替えてやろう」という気持ちになりました。明日も絶対に勝つんだという気持ちを前面に出し、声を出して喜ぶなど、僕なりのチーム貢献を貫きたいと思います。

中根聡太

自分の武器はマネジメント能力や雰囲気づくり、トス回しの部分で、派手なトスが上げられるわけではありません。できるだけ決まりやすい状態でアタッカーに打ってもらうようにマネジメントすることをアーマツ監督から求められています。クイックやパイプなど、中央ゾーンからの攻撃が得意なので、そこを意識しながらプレーしていました。第4セットを取られても、気にはなりませんでした。目の前の1点を取ることしか見ていませんでした。カジースキがケガをして、途中から入った郡もつらかったと思うけど、よく頑張ってくれたと思います。アーマツ監督も断固たる決意で「お前を使う」と言ってくれたので、それに応えたいと思っていました。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

期待のルーキーが躍動。誰かのために戦えるチームは強い

チーム全体の勝利である。それは間違いない。それでも、あえて勝利の立役者をあげるなら、やはりルーキーの3人だろう。セッターの中根は強気のトスワークを見せた。センター線の速攻、バックアタックを駆使して相手のブロックを揺さぶった。カジースキの負傷で第4セットの序盤からコートに立ち続けた郡も、勝利に貢献した。第4セットの最後にミスをし、ベンチで落ち込む郡を励ましたのは、「俺のシャットに比べたらマシや」と声をかけた西田だった。気持ちの切り替えがなかったら、第5セットの反撃はなかったかもしれない。中根が言う。「いろいろな思いを力にして、人のためにいいバレーをしていきたい。もちろん勝てたら最高ですが、この大会でチームを去る人に『いいチームだったな。このチームで頑張ってよかったな』と思ってもらえるような試合がしたいと思います」。チームは今、一つになった。誰かのために戦えるチームは強い。間違いなく。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS JTサンダーズ
第1セット 23 - 25
第2セット 25 ー 22
第3セット 25 - 23
第4セット 25 ー 27
第5セット 15 ー 12
日付 2018年5月3日(木・祝)
試合 第67回黒鷲旗全日本男女選抜大会 準々決勝
場所 丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)
メンバー カジースキ、金丸、渡邉、福山、西田、浅野 L本間
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